●「富嶽」差動化の試み●
「前段差動」、「全段差動」、「全段差動直結」(「富嶽の仲間達」参照)と差動アンプを色々試してみて、その特徴が掴めたように思います。
○音は、どんな球にもふっくらとした柔らかさ、透明感、繊細感が加わる。
○新しい球でも充分エージングが進んで「熟成された」音が出てくる。
○出力はOPTが同じならプレート電流で決まるので、球のプレート損失勝負になる。
○「前段」だけの差動では、「差動の音」の特徴が出にくい。出力段の寄与が圧倒的。
「富嶽」も差動にして見ようと考えて来ましたが、前段をコンパクトにレイアウトしているので初段管をもう一本入れる余地がありません。しかし出力段を差動にすれは、音として全段差動に近いものが出来ます。また普通の球で常時使うおうとすると20W弱が限度ですが、「100ワッター」と呼ばれる送信管ならもっと上を狙えます。
というわけで送信管の10Vフィラメントの為の「アダプター」を使って、「富嶽」改造のメッコをつけるための差動化実験をしました。
実験に使った送信管、左からトッププレート直熱3極管805、直熱3極管845、トッププレート直熱5極管814です。右の端は「ぺるきゃっと」で使用されている6F6とほぼ同じ規模の球6G6GCです。
「エンジン」の差は歴然。軽戦闘機「ぺるきゃっと」が束になってかかって来ても、高々度からバタバタと撃ち落としてやります(笑)。
10Vのフィラメント用電源を持ったアダプターてす。ソケットはジョンソンタイプの大型4ピンと、UY5ピンを備えています。プレート電圧、バイアス、G2、カソードはオクタル・プラグで「富嶽」のオクタル・ソケットに繋いで供給を受けます。「富嶽」に連結しての動作の様子は「富嶽十景」の「845pp」を参照してください。
12V-5Aのヒーター・トランスを「支柱」代わりに使っています。8Vのタップからショットキー・バリヤー・ダイオードでブリッジ整流し、6800/16のコンデンサー3個で簡単に平滑しています。真ん中下に見えるのが差動化のための定電流ユニットです。
こんな簡単な定電流ユニットを共通カソードとアースの間に挟むだけで差動になります。ツェナーダイオードは6.2Vのものを使っています。D970は内部でダーリントン接続になっていますから電圧降下が1.2Vあり、抵抗Rの両端電圧は5Vになります。20Ωですからこの定電流ユニットを使えば真空管1本当たり125mA流れる事になります。またツェナーダイオードを動作させる電流2mAを得るために、D970のBaseは100KΩの抵抗を介して+B3の200V電源に繋いでいます。黄色い線が見えるのが+B3からのラインです。D970の発熱は殆どありませんが、万一に備えて小さな放熱器に取り付けています。
| Ep圧(V) | Eg(V) | Po(W) | 無信号時Ip(mA) | 最大出力時Ip
(mA) |
| 805 | 460 | +47 | 25 | 110 | 83 |
| 814 | 460 | +23 | 23 | 113 | 78 |
| 845 | 455 | -27 | 32 | 125 | 116 |
| 814はEg2=200Vで5極接続で使いました |
上の表が実験結果です。805、814は送信管の特徴で出力が出る程プレート電流が減ってきます。カソードではちゃんと125mA流れてコントロールされているので、プーレト電流の減った分はプラスバイアス動作の為グリッド電流が流れ込んでいると考えられます。814では更にG2電流が加わります。このプレート電流が減った分、差動アンプとしては出力が小さくなるいう結果になっています。845ではこの差が余りありません。125mAの大電流を享受してこの3つの中では最大の出力が得られました。
音は元の送信管の芯のある音に差動の特徴である、透明感、柔らかさ、繊細さが加わります。でも「ヤワ」になるのではなくて、ここぞ言うときにはく゜ーんと延びた豪快な低域が聴かれます。元の211をオーティオ用の規格に改めた845で、この差動化の御利益が顕著に現れました。805は送信管の荒削りの豪快なところ、814は歯切れの良さが印象的でした。
最後に動作中のプッシュプルの片側球を抜くという実験をしました。ぺるけさんが「差動で片側の球が事故で切れると、もう一方の球に2倍のプレート電流が流れる。」と心配されていたからです。案の定、10mA程度の電流増はありましたが、それ以上は流れませんでした。という訳で固定バイアスにしておけば、万一の場合には固定バイアスがプレート電流を制御してくれるので安全です。