全段差動直結への道



差動アンプシリーズ その1−1 全段差動直結 12AX7-KT88pp

全段差動直結 KT88pp
   前作ZERO-ONEで出力段を前段と直結にしてすっきりとした素直な音が得られたので、この方式をプッシュプルに拡張してみました。LUXキットのA3500を「下敷き」にして作っています。このシリーズは同時にLUXキット徹底改造シリーズでもあるわけです。キットの方は初段6AQ8、ドライバー段6AQ8で、ムラード型位相反転になっています。これだと前段は双3極管3本で賄える(次の前段差動 50CA10ppの写真参照)のですが、差動だと4本必要です。増幅度の大きな球で1段増幅すると2本で済みますが、出力インピーダンスが高くなるのでカソフォロやSRPPにして下げる必要があり、矢張り4本になります。思案の挙げ句シャーシ後方前段部分取り除き、100*150の銅板で作ったサブシャーシを替わりに搭載しました(写真上の左部分参照)
  前段は、前作で「実績」のある12AX7のSRPPで差動にしました。直結にすると出力段のカソード電位を前段の+Bにバイアスを加えた分あげなくてはなりません。これを抵抗で賄うと大変な熱を発生するので、「嵩上げ電源」をPTのC巻き線を利用して作り、電位だけで電流の流れない回路にしました。「嵩上げ電源」が立ち上がるまでのKT88保護のため、出力段の+Bにはタイマーリレーを入れてあります。見にくいですがOPTの所にある平ラグ板が出力段の差動ユニットです(写真上の右部分参照)。25mm角のブロック型の放熱器を介してトランスのネジを利用して固定しています。
 PP特有の押しつけがましさが消えてZERO-ONEで実験した時と同様に素直ですっきりした音です。時間とともに音がどんどん良くなり、30分経ってウォームアップが完了すると、傍熱感管とは思えない柔らかで繊細な音が出てきます。 KT88がこんなに暖色系の音を出せるとは!!
全段差動直結 KT88pp 回路図 2000.7.3

差動アンプシリーズ その1−2 3段差動全段直結 6922-KT88pp
2000.8.3
   前作全段差動直結KT88ppでの不満は、音が良くなるのに30分もかかる事でした。7つボリュームで順番に動作点を追い込んでいきますが、何度も調整を繰り返さねばなりません。12AX7のプレート電流が0.5mAと極端に少なく熱的に平衡に達するのに時間がかかる事が原因の一つではないかと考ました。それで、前段の変更を検討しました。以下のような問題点があります。

1) 他の3極管では増幅率が12AX7より小さくなるので前段は2段増幅にならざるを得ず、差動なら最低4本の双3極管が必要です。一方A3500のパワートランスではヒーター容量は全部で7Aで、出力管1本当たり1.5Aとすると前段には1Aしか残りません。ヒーター電流から可成りの球が落第になります。

2) 出力段は前作同様「嵩上げ電源」にするとしても、ヒーター・カソード耐圧から2段目のプレート電圧は200V程度になります。各段100Vのプレート電圧で低歪みかつ十分な増幅率のある球が必要です。

3) ヒーターバイアスをかけてしまうと、これまで初段のCRDに使っていたマイナス電源に使っていたヒーター巻き線が使えなくなります。別途マイナス源を手当しなくてはなりません。

4) 前作では出力管のカソード電圧は安定し差動動作は安定していました。これは12AX7のgmが小さい事と、前段が12AX7のSRPPで、上側球の定電流動作の為にプレート電圧が安定していた為ではないかと考えられます。場所の制限から前段は前作と同じ4本しか入りませんから、SRPPには出来ません。何らかの安定化の工夫が要ります。

5) 7個の調整用のボリュームは多すぎました。3〜4個が妥当です。

  解決編は、3段差動全段直結 KT88ppの製作で。

  上の写真はその姿ですが、実はシャーシ上面は前作と全く同じです。


差動アンプシリーズ その1−3 2段差動全段直結 12AX7/6922-KT88pp
2000.8.12

   電圧増幅管を4本しか使えないという条件で「本末転倒」を解消するため、12AX7SRPPによる2段差動直結に変更しました。上側球6922下側球12AX7の変則使用です。KT88は3結で使用しています。
  また、高くなった前段の電源電圧を利用して12AX7の電流を0.5mAから0.9mAに増やしました。これにより、「音が良くなるのに30分もかかる」点は解消できました。12AX7、KT88共にカーソード抵抗は全く入っていませんがアンバランス電流は極めて安定しています。

  音は「差動アンプシリーズ その1」と殆ど同じですが、少し太めに聞こえます。「プッシュブルでシングルの音」という差動アンプの謳い文句にぴったりの音です。クラッシクには丁度良いたっぷりとした低音ですがジャズではもう少し締めたくなります。DFは3有り、水準に達しているはずですので、DFの問題ではなくて球そのものの音なのでしょう。  
2段差動全段直結12AX7/6922-KT88pp 回路図


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