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イントラ反転ユニバーサル・アンプ 「BIG−ONE MarkV」 2002/7/14
更なる進化「BIG−ONE MarkW」への道
イントラ反転とは
宍戸公一氏が発明されたインターステージ・トランスの使い方で、2次側の極性を通常とは反対にして使う事です。インターステージ・トランスは多量の直流電流を重畳して使うことを想定されていません。送信管のようにバイアスを
プラスにして使う場合は、2次側のコイルにグリッド電流が流れます。ここで極性を1次側と反転しておくと、コアに発生する磁場の方向が互いに反対となり打ち消し会うので、コアの飽和による性能の低下を防ぐことができます。これにより、グリッド電流に負けない電流を1次側に流すことができるようになります。 |
1.何故、今イントラか
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シングルユニバーサルアンプ「BIG-ONE」製作の動機は、宍戸式イントラ反転アンプのように送信管を使ってみたかったからです。これは故宍戸先生の著作の表紙ですが、何とも個性的なスタイルの真空管達です。左から、8012A 830B 826 805 808です。1万円を越える808以外は所有しています。送信という需要が無くなり、格安になった送信管を使用するのがミソで、「日本駄球協会」の趣旨にも合致するイントラ反転アンプです。しかし「宍戸式アンプ」が余りに有名になってしまって、800や808は「駄球」としての面白味に欠けます。人気が無くなるまで待つことにします(笑)。 送信管は、小型の球でもプレート損失はだいたい50W。805に至っては125Wもあります。シングルでも10Wを越えるアンプが楽々作れます。 使い方としては+バイアスになるのでグリッド電流を処理する回路が必要になります。宍戸式のイントラ反転かカソ−ドフォロワーです。初代「BIG-ONE」の時は、シャーシ加工からアンプを作るのは初めてだったし、インターステージトランスは高価な上、どれを使ったら良いのか判らなかったので、経験のあるカソ−ドフォロワーにしました。しかし、「カソフォロで本当に宍戸式アンプの音が出ているのか」ということは、いつも気になっていました。 今度、パソ通時代からの知り合いの善本さんが、ソフトンICLから出力トランスのコアを使った大型イントラRC−20を¥9800で出されたので、イントラ反転の音を確かめるべく「BIG−ONE」を改造することにしました。
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2.回路について
「BIG-ONE」からの変更点は ●出力段入力 カソ−ド・フォロワー →イントラ反転 ●初段 6267五結 →6267三結 ●初段−カソフォロ段間 コンデンサー結合 →初段−ドライバー段 直結 ●グリッド電流処理 7119によるカソ−ド・フォロワー→FETによるソース・フォロワ
球の違いによる音の差をなくすため(本当は電圧増幅段を変更するのが面倒だから)、6267と7119はそのまま使用しました。但し、これまでは6267一段だけの増幅でしたが、今度はR−20ドライバー段となる7119でも増幅され、感度が高くなりすぎるので6267は三結としました。 出力段のグリッドバイアスのかけ方とグリッド電流の処理回路ですが、−120V〜+40Vとなるとこれまで同様±電源のカソフォロ回路しか思いつきません。球でやると面倒なのでFETによるソース・フォロワーとしました。考え方は全く同じで、ドレイン−ソース間の電流をゲートの電圧で調整してくれます。ゲートの前に付いている5.6KΩの抵抗はFETの発信止めです。尤も、ここまでやれば、何もトランス結合にしなくともコンデンサー結合でも動くんですけどね。作ってしまってから気が付きました(笑)。 RC−20は特性が優秀で、同じNFB回路でオーバー・オールのNFBをかけても大丈夫でした。それでも一段増幅から二段増幅になって増幅度が上がったので、これまで出力トランスの16Ωからとっていたのを4Ωからにしました。中点付きのトグル・スイッチでNFBなし、6dB、9dBの3段が選べます。 ドライバー段の7119は低内部抵抗のMT双三極管です。両ユニット使用時のプレート損失は8Wありますので、実効プレート電圧が230V程度ですと、34mAまで流せます。パワードライブとして6L6等の出力管をドライバーとして使っているケースも有りますが、電流は30mA前後なので、これでも充分ドライブ管として使えるでしょう。 出力トランスの極性ですが、これまでは1段増幅なので位相反転が1回。今度は2段増幅ですが、イントラでもう一度反転するので3回。どちらも同じ奇数回なので、そのままで使えます。 コンデンサーは汎用品の電解コンですが、電圧増幅回路のカソードバイパスだけは音に利くので、初段はニチコンのMUSEの1000μを、ドライバー段は汎用品にバイパスとしてAUDYNの金属蒸着フィルムコンMKP QS(¥600もした!!@テクニカルサンヨー)を使いました。 |
BIG−ONE MarkV 信号回路 2002/07/21 updated |
3.製作編
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回路は出来上がりましたが、さて実装はどうするか。イントラといってもRC20は同社のアウトプット・トランスRW20と同サイズでW:83mm, D:78mm, H:107mm有ります。「BIG-ONE」が鈴蘭堂の最大サイズのシャーシSL20を使っているといっても、これを2個並べる余裕はもう有りません。 目を付けたのが、Rコアの為にトランスの厚さがケースの1/3程度であること。
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普通アウトプット・トランスの下はあまり部品が混んでいません。そこで、ケースから出して、現物で当ててみると、キッチリ填ることがわかりました。誘導ハムが気になりますが、この状態で通電して、手を当ててみても変わりません。右下に見える電源トランスからの誘導も気になりますが、裏蓋にRC20を固定して、シャーシに取り付けてもノイズが増えるようにことは有りませんでした。トランスの周りにビッシリと取り付けたコンデンサーが、図らずも役立っているのかもしれません。
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回路図にあるグリッド電流処理用のFETとRC類も、ついでに裏蓋にとりつけて放熱する事にしました。 イントラをシャーシ内に収めたので、外観は「BIG−ONE」と全く変わりません。しかし、3kgの重量増は堪えます。もはや3階の「格納庫」から飛び立てず、門外不出の機体になってしまいました。
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4.性能編
とりあえず「赤い鳥」の300Bで性能測定しました。WEのデータと比較すると、Recomended OperationよりきついもののMaximum Operationよりは緩い動作になっています。それでいてMatkVでは、カソフォロのBIG−ONEより出力が増えていて、Maximum Operationよりも更に大きな出力になっています。プラス領域まで踏み込んだA2動作では、トランスドライブの方が入力信号のピークまでキチンとグリッドを振り切れるという事でしょう。パラにすればシングルで300B−30Wのアンプになります!!
NAME | Ep(V) | Eg(V) | Po(W) | Ip(mA) | Rl(KΩ) |
WE Recomended Operation Condition | 400 | -89 | 11.5 | 50 | 3 |
WE Maximum Operation Condition | 450 | -97 | 14.6 | 80 | 3 |
BIG−ONE 300B(SOVTEK) | 420 | -87 | 12.5 | 80 | 3 |
BIG−ONE MarkV 300B(SOVTEK) | 415 | -87 | 15.3 | 80 | 3 |
音の方は、まだ聞き込んではいませんが、一聴してこれまでより「骨太」の音になっています。イントラのコアの音?
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更なる進化「BIG−ONE MarkW」への道
2002/7/28
2002/8/3 updated
2002/8/12 updated
2002/8/18 updated
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インターステージ・トランスの導入により、低域は分厚く、張りのある描線の太い音が出るようになりました。シングル・アンプの素直な中高域に押し出しの強い低域、宍戸アンプとはこのような音であったのだと知ることが出来ました。低域の押し出しでは、プッシュプルの「富嶽」に一歩譲らざるを得なかったシングル・ユニバーサル「BIG−ONE」ですが、これで対等に戦えます。 しかし、気になる点もあります。FETの足に直づけで長々と延ばした配線が事故に繋がらないか。パスコンで交流的にはショートされているとは言うものの、インターステージトランスの巻き線を通じて出力管のグリッドに繋がる抵抗の「電源」が「石」でいいのか。 後者については、FETの部分を球に変えると音が柔らかくなる事が確認できました。しかし、場所が2つのイントラの間に置くしかなかったので、ハムが混じります。といってシャーシ上面に、これ以上「増殖」する場所は有りません。色々考えた末、左の写真のように思い切ってトップの6267をシャーシ内に収める事にしました。信号は入力端子の直後に最短距離でグリッドピンに繋がります。この「下」には片方の7119が有ったのですが、NFB−ON−OFFスイッチと場所を入れ替え、スイッチも小型のモノに交換してその上に6267が収まっています。2つの6267の間隔が狭いのが気になりますが、元々プレート全体がシールドされている構造なので、シールドソケットにしているのと同じ効果が期待できます。
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6267のソケットはL型金具とサポートでシャーシ下に吊すかたちで固定しています。サポートで切り替えスイッチの場所を確保しています。
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外観は殆ど変わりませんが、シャーシ内は大幅な変更になりました。左端に初段の6267−三結、その下の大きなコンデンサーは7119パラのドライバー段のカソードパスコン1000μ/160Vです。7119のソケットはコンデンサーの下に有ります。その右に2つあるセメント抵抗が、7044パラで構成しているグリッド電流処理回路の10KΩ/10W抵抗です。シャーシ裏蓋にはインタースデジ・トランスだけを取り付け、蓋をすると、このセメント抵抗の所までコアが来ます。コアの高さが小さいので、シャーシに押しつけるような形で、バイアス回路素子を取り付けています。シャーシの深さが大きいので助かりました。 その右、シャーシ面積の約40%を占め、コンデンサーや放熱器がギッシリ詰まっているのが電源回路です。ユニバーサル・アンプでは各段の電圧を独立させる必要があるので、このような大がかりな電源回路が必要になります。 |
BIG−ONE MarkW 内部 |
「BIG−ONE MarkW」の回路
回路図上は大きな変更はありません。K2544が7044パラに変わり、その他少し定数を変えてある程度です。NFB量の切り替えは省きました。小型のSWでは中点OFFのが見つかりませんでした。
パラシングル時に2つのユニットのプレート電流を調節するため、カソードに100Ωのボリュームを入れました。 4700μ/16Vのコンデンサーで交流的にショートしています。(2002/9/2 update) |
BIG−ONE MarkW 信号回路 |
「BIG−ONE MarkW」の秘密兵器
V→WではFETから球への置き換えを行いましたが、「石」の音も捨てたモノではありません。「BIG−ONE MarkW」では、この球と石の違いを何度でも取り替えて聴き比べることが出来るのです。出力管スヴェトラーナEL34の後方、通常7044の有るところに妙な放熱器が2つ見えます。これはK2544をMT9ピンプラグに取り付けたモノで、簡単に差し替える事が出来ます。ヴァイオリンや室内楽のような弦楽器の柔らかい音色が欲しいときには「球」を、くっきり、ハッキリとした音が欲しいときには「石」をという風に、同じ出力管でも音色を使い分ける事が出来ます。 |
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性能編
周波数特性
300BとEL34−三結の1KHzの矩形波です。NFB-OFFの特性は変わりませんが、ONにすると300Bはもう1〜2dB上げてもいいようですし、逆にEL34ではリンギングが出かかっておりもう1〜2dB下げても良さそうです。これは出力管の増幅度が
異なる為にOver−AllのNFB量が変化してしまうからです。この微調整のためこれまではのNFB量変更SWを付けてあったのですが、小さなトグルSWでは適当なモノが見つけられず省略しています。
| 300B-OFF 300B-ON
EL34-OFF EL34-ON
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EL34−三結での測定です。NFBは丁度6dBです。10kHzのデータからするとイントラ反転でなくて、通常接続の方が広帯域で都合が良いのですが、1kHzでは通常接続ではピークが出ています。これはNFB抵抗に220pFをパラっても消えませんでした。一方イントラ反転ではそれが消えています。
| INTRA反転-10k-OFF INTRA反転-10k-ON
INTRA-NORMAL-10k-OFF
INTRA-NORMAL-10k-ON
INTRA-NORMAL-1k-ON INTRA反転-1k-ON
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45種の出力管聴き比べ
「その1 送信管たち」
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左から 830B、811A、直熱ビーム管814、805,826,STC12E1,8025A
カソフォロの初代「BIG−ONE」以降に「仲間」に入ってきた奴もいます。今回は、どんな音を聴かせてくれますか。乞うご期待。
「BIG−ONE MarkW」動作一覧 Part1
NAME | Pp(W) | Eb(V)max | Ec2(V)max | Ef(V) | If(A) | 結合 | Ep(V) | Eg(V) | Eg2(V) | Po(W) | Ip(mA) | Ig(mA) |
826(KEN−RAD) | 60 | 1000 | | 7.5 | 4 | | 408 | 28.8 | | 12.5 | 100 |
811A(CHINA) | 45 | 1250 | | 6.3 | 4 | | 476 | 41 | | 16.3 | 94 | 18 |
830B(UNITED) | 60 | 1000 | | 10 | 2 | | 494 | 24 | | 22.4 | 126 | 7 |
814(GE) | 50 | 1250 | 400 | 10 | 3.25 | 5結 | 470 | 7.2 | 240 | 17.4 | 106 | |
805(CHINA) | 125 | 1500 | | 10 | 3.25 | | 489 | 36.8 | | 21.8 | 126 | 16 |
8025A(RCA) | 30 | 1000 | | 6.3 | 1.9 | | 257 | 15.9 | | 5.8 | 100 | 16 |
12E1(STC) | 35 | 800 | 300 | 6.3 | 1.6 | 5結 | 414 | -44 | 240 | 14.3 | 78 |
4D32(RAYTHEON) | 50 | 600 | 350 | 6.3 | 3.75 | 3結 | 490 | -45.6 | | 16.3 | 89 |
829B(CETRON)単管パラ | 15(per unit) | 600 | 225 | 6.3 | 2.25 | 5結 | 476 | -15.5 | 240 | 6.4 | 60 | |
826(KEN−RAD)
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100CCのビーカーを逆さにしたような形が気に入っていました。その中に「みの虫」のような小さなプレート。それでも、プレート損失は60Wもあります。しかし今回、片側が少し暗いなと思っているうちに小さな青白い火花が飛んでお亡くなりになり、比較試聴出来ませんでした。826は送信管収集の最初の品でした。南無阿弥陀仏。
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811A(CHINA)
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この中の最廉価品(ペアで5K程度)、かつ最優秀球。つまりコストパフォーマンス最高です。初代「BIG−ONE」の時も、その華麗な高音が気に入られた方も居られました。私には、ちょっと派手過ぎなところあり、ソースによっては喧しく聞こえるので、愛聴球という訳ではありませんでした。プッシュの「富嶽」で聴く方が、派手さが抑制され音の分解能感が高く聞こえるので好きでした。しかし、この「MarkW」で再評価しました。高域が前に出る傾向は変わりませんが、透明感を伴って出てくるので非常に心地良いのです。コープマンの弾くバッハのチェンバロ協奏曲や平均律が、こんなに瑞々しく聴けたことはありませんでした。RC-20搭載アンプのお勧め球です。
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830B(UNITED ELECTRONICS)
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ご存じ、宍戸先生が「イントラ反転」を開発されたきっかけとなった球です。
「BIG−ONE」本体では6.3Vを整流していますので、フィラメント電圧は7.5Vまでしかだせません。手前の黒い箱は、845のような大型UXピンと10Vのフィラメント電圧を供給する為に作りました。箱の左右両端はヒータートランスで出来ており、6−12Vが選べます。8Vをショットキーバリアーダイオードで整流すると丁度よい電圧になります。830Bの足は通常のUXですが、フィラメントは10Vが必要なため、フィラメントだけここから供給しています。本体のフィラメント電源は、電圧調整用の抵抗を差し込む、バナナ端子をオープンにすることで切り離せます。 初代「BIG−ONE」では音の質感は高いものの、高域がやや硬質で手放しで賞賛とい訳にはいきませんでした。しかし、MARKWで聴くと全体のバランスがよくなり、元々高かった質感と相まって評価がグーンとアップ。流石、宍戸先生が取り上げられた球だけの事はあります。イントラ反転の銘球です。出力も22.4Wと最高を記録。 |
814(GE)
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大型ビーム送信管です。偶にしか行けないクラコンで、いつもフィラメントだけ点火されて床に転がされている可哀想な球でした。直熱多極管で大型のこの球は、「現役」の頃はさぞかし高価であったろうと思われます。この球は足がUYでフィラメントが10VですUY→US変換アダプターを作っても、フィラメントは「黒い箱」からになりますので、ソケットもこちらに付けました。P,G,G2の電圧は本体からUSプラグ経由で送り込まれます。 これまでは出力は取れるものの特徴のない素っ気ない音でしたが、イントラにすると音全体に艶が出るようになりました。出力は1KHzで測定していますので、低域では出力が低下します。真の実力はソフトンの次期大型OPTで発揮されるでしょう。
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805(CHINA)
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プレート損失125W。845もフィラメントの電力は同じですが、プレート電流は余り流さない使い方が奨励されています。こちらはプレート電流も210mAまで流せます。ハンドレッドワッターの名に恥じず、荒削りで、豪快な音が魅力です。「富嶽」では「黒い箱」を2つ使いますが、夏は放熱が大きくて長時間聴く気にはなりませんし、冬は暖房不要です。シングルでもリスニングポジションまで輻射熱が伝わってきます。大邸宅以外は冬季限定球。
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8025A(RCA)
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この形、何かを連想しませんか。そう、牛の刻参りの呪いの藁人形。音は形に関係なく、この中で尤も柔らかい音でした。面白いことに、無信号時はプレート電流が100mAで、グリッド電流が16mAなのに、出力が増えるにつれてプレート電流が減ってグッリド電流が増えます。最大出力時には91mAと30mAになります。しかも、プレート損失の限界にはまだ間があるのに、プレートが赤くなってきます。普通の球ですと慌てて電源を切らないといけない状態ですが、この球はこれが普通らしいのです。RCAの送信管マニュアルにはred−orangeに光るという記載がよく見受けられるのですが、普通に使っていてその色になるのはこれだけです。 初めは、UXソケットに刺してプレートとグリッドを管壁についたピンに繋いだのですが、一向にプレート電流が流れてきません。で、よくマニュアルを読むと、何と普通はプレートに繋がる3番ピンがフィラメントセンターになっているのです。フィラメントがプレートと同じ電位では電流が流れないのも当然です。これが藁人形の呪いか(笑)。
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12E1(STC)
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これと次の4D32は傍熱管です。丁寧な造りの球で、キュートという言葉ぴったりの非常に魅力的な形の球です。しかし、天は二物を与えずというか、「日本駄球協会」での音の評価はあまり高くありません。「BIG−ONE MarkW」では、音はグレードアップされ、普通のアンプならこのままで充分使えます。しかし、他の球の音も向上しているので、偏差値は変わりません。オーディオ専科から、この球をブッシュで使ったキットがAP−919という名前で発売されています。一度、本職の手になった音を聴いてみたいと思っています。
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追加 4D32(RAYTHEON)
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うっかりしていて、最初の「集合写真」に入れるのを忘れていました。「宍戸本」では「巨大なドングリ型で、プレートには宇宙船の胴体を思わせる4枚の大きな翼が放熱用に付けられているいかにも高出力に耐えられそうな」と紹介されています。アンプ、球とも写真が無く、通販のカタログ等にも乗っていないので、「巨大ドングリ」がとのようなものか実物を入手するまで判りませんでした。「標準球」EL34と比較すると判るように、巨大ドングリとしか形容のしようのない球です。 ヒアリングテストでは「傍熱管アンプとしては私がこれまで作ったアンプの中で出色ののものということが出来ます」「ある程度のパワーをぶち込んでやらないとうまく鳴ってくれなかったコーン紙の重いJBLの大型モニタースピーカー、例えば4343などでバロックを華麗に響かせるなどという芸当ができそうな感じのアンプです。」とあります。但し、これは335Vのスクリーングリッド電源を安定化し、シングル20Wの出力を得たときの話です。「BIG−ONE」のSGは250V固定であり、OPTの容量もそれに耐えるものではないので、実力発揮とは行きません。これもソフトンの次期大型OPT待ちです。3結での評価ですが、確かに余裕のある音でもっとパワーがでる感じです。また電極が6C33並の大きさのため、30分以上経たないと真価を発揮しないようです。
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追加2 829B(CETRON)
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これも勘違いで入れてなかった送信管です。6C33と同じ7本足に2本の「角」、異形の球です。双5極管ですが、カソードは共通なので単管ステレオという訳には参りません。「角」はプレートピンです。その茶色ソケットはベークのスペーサーの中に、MTソケットを壊して得た足を2個入れて作りました。「BIG−ONE MarkW」ではパラシングルの場合MarkUのように各ユニットのグリッド電圧を個別に制御する機能はありませんが、両プレートに測定用の抵抗が入れてあり、プレート電流を監視することはできます。電流がよく流れる方のユニットでプレート損失を超えないように調整しています。グリッドには発振防止用に1kΩ抵抗を入れています。 「富嶽」で単管プッシュとして鳴らしていたときは、出力は大きく取れるものの音はイマイチで、長らく押入で眠っておりました。今回鳴らしてみてビックリ、傍熱管なのに直熱管のような切れと透明感のある音がします。チェンバロが最高、実に美しい音色を引き出してくれます。今まで誰もこんな形でこの球を鳴らした事はなかったでしょう。大器晩成、ようやく真価を発揮しました。「BIG−ONE MarkW」での動作では、このプレート電圧では振幅がとれず、次の420Vではプレート電流を流せないためより大きな出力が得られませんでした。プレート電圧350V辺りが最適かと思います。
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「その2 直熱管たち」
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上左から 250、245、HY65、811−3A,572−30,845
下左から PX25、300B、2A3、6B4G、801、1619
「BIG−ONE MarkW」動作一覧 Part2
NAME | Pp(W) | Eb(V)max | Ec2(V)max | Ef(V) | If(A) | 結合 | Ep(V) | Eg(V) | Po(W) | Ip(mA) | Ig(mA) |
PX25(GEC) | 30 | 500 | | 4 | 2 | | 420 | -30 | 10 | 70 |
250(RCA) | 25 | 450 | | 7.5 | 1.25 | | 423 | -66 | 6.4 | 60 |
245(RCA) | 10 | 275 | | 2.5 | 1.25 | | 211 | -38.3 | 3.1 | 41 |
801A(RCA) | 20 | 600 | | 7.5 | 1.25 | | 275 | 8.4 | 5.8 | 72 | |
| 20 | 600 | | 7.5 | 1.25 | | 433 | -26 | 4.1 | 45 | |
HY65(HYTRON) | 15 | 450 | 250 | 6.3 | 0.85 | 3結 | 285 | -24 | 4.6 | 50 | |
811−3A(SVETLANA) | 65 | 800 | | 6.3 | 4 | | 468 | -54 | 13.4 | 100 | |
572−30(SVETLANA) | 125 | 1000 | | 6.3 | 4 | | 409 | 20 | 14.3 | 118 | 5 |
845(CHINA) | 75 | 1250 | | 10 | 3.25 | | 493 | -37 | 21.8 | 120 | |
300B(SOVTEK) | 40 | 450 | | 5 | 1.2 | | 415 | -87 | 15.3 | 80 | |
2A3(CHINA) | 15 | 300 | | 2.5 | 2.5 | | 277 | -50 | 5.8 | 54 | |
6B4G(RUSSIA) | 15 | 300 | | 6.3 | 1 | | 273 | -50 | 6.4 | 50 |
1619(RCA) | 15 | 400 | 300 | 2.5 | 2 | 5結 | 287 | -9 | 4.6 | 53 | |
PX25(GEC)
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PX25とPX25Aの関係は、211と845の関係に似ています。845は211のグリッド巻き線のピッチを荒くして直線性が向上した代わりに、増幅度が下がりバイアスが深くなりました。25Aもバイアスが深く、フルスイングさせるには実効電圧で100V以上の入力を必要とし、トランスドライブに向いた球です。これまでの「BIG−ONE」はカソフォロとは言え、6267一段でそのような大振幅を低歪みで出すことは困難でAではなく25を狙っていました。ヤフオクでようやく25を落としたと思ったら、「BIG−ONE」の方がイントラになったのですから、皮肉なものです。この球の増幅度が大きいのは、電極構造がNECの50CA10と同様のビーム管の内部3結の為らしいのですが、300Bにも匹敵する直線性を見事に確保しています。 音は古典球に特有の弦楽器の柔らかい表現が得意で、室内楽に向いています。カルテットの各楽器の音がバラバラにならず、かといって団子になることもなく、心地よく響いてくれます。デノン・レーベルのスーク/ルイジッチコヴァの、ヘンデルのヴァイオリン・ソナタ集は、球によってはヴァイオリンが古楽器のような鳴り方をするのですが、PX25では見事にスークのストラディヴァリウスを鳴らしてくれます。
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250(RCA)
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PX25のアメリカ版です。こちらは純3極管構造でバイアスも300Bと同程度の深さです。音はPX25と比べるともう少し華やかであり、艶っぽい音ですが、トータルでは甲乙付けがたいところです。しかし、同じような電源とカソードの電力ながら、PX25が10Wとれるのに対して、250は6.3Wと鳴らし易さでは若干譲ります。
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245(RCA)
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これも古典球の香しさを備えた球すが、出力がシングルでは3.1W程度で、オーケストラでは少し苦しくなります。これの出力アップ版が250という事になります。パラシングル(「BIG−ONE MarkU」)にするかプッシュプルにするかして、もう少し出力を出したくなります。
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801A(RCA)
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宍戸氏の本によると、通常のマイナスドライブの音は「ブリキ音」(「天下の名器ストラディバリやグヲルネリの妙音の中に、ブリキを引っ掻いたような金気の音が混じり込むのです」)であると書かれています。この事を確かめるために、プレート電圧を下げてプラスバイアスにした設定と、マイナスバイアスの設定の比較試聴を行いました。同一のアンプで行うのですから、これ程公平な比較はありません。 結果ですが、「イントラ反転」の音は高域〜低域まで同じ音色で統一されて出てきます。音に芯があるというか、エネルギー感が横溢しています。一方マイナスドライブの場合ですが、出力は劣るものの、ヴァイオリンの高い音がよく伸び、透明感があります。「ブリキ声」という感じは全くありません。プラスとマイナスで音が変わるのは確かですが、どちらが良いかは好みの問題で、客観的に甲乙を付けるのは難しいという感想を持ちました。
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HY65(HYTRON)
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「山椒は小粒でピリリと辛い」を地で行くような球です。小型トッププレート球ですが、タイト製で造りもしっかりしています。出力を求めるにはプッシュの方が会っていますが、直熱管の特徴が良く出ている球で、すっきりと延びた高音と透明感のある低域で、クラシック・ジャズのジャンルを問わず使える球です。これも814と同じ頃、クラコンに溢れてるように置いてありました。今はどうでしょうか。 HYTRONには、この上にHY67というプレート損失65Wのトッププレート・ビーム管があり、シングルにはこちらの方がよさそうなのですが、実物を見たことはありません。高くはなさそうで、個人輸入すればいいのでしょうが、手続きが面倒そうなので未入手です。
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811−3A(SVETLANA)
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カソフォロの初代「BIG−ONE」では7.7Wしか出せませんでした。それでもマイナス域だけだと3.6WですからA2をしていました。トランス・ドライブの方がカソフォロよりプラス領域での振幅が大きいようで、今回は10W出ています。初代では柔らかく素直な音ですが、おとなしすぎるという印象でした。今度は音もトランスの音が加わるためか、高域が延びているように聞こえ、楽器の陰影をクッキリと描き出します。RC20と音色面での相性が非常に良い球です。さすが善本さんがRC−20を使ったシングルの作例の写真はST管ですが、今は他の球と同じストレートのものしか無いようです。「A」の付いているものがストレート管で、付いてないモノがST管です。
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572−30(SVETLANA)
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外観は811−3Aと全く同じですが、プレート損失は倍近い125Wも有ります。811が金属プレートなのに対して、572はカーボンプレートになっています。トッププレートの送信管に572Bというのがありますが、これは811シリーズと同様純オーディオ用に開発されたモノです。ハイフォンの後ろの数字は増幅率を示し、−3、−10,−30,−160の4種類があります。572−3は8111−3とほぼ同じ特性でプレート損失が大きくなっただけのものです。グリッドの構造が同じだと思われます。その意味で572−10を買うなら、より安い811−10を買う方が賢いし、572−160は既存の送信管572Bと特性上よく似ているので、手軽にプラスドライブの出来そうな572−30を買いました。 音は811−3Aと基本的に類似の傾向ですが、全帯域で力強さが加わり、より迫力のある音になっています。
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845(CHINA)
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これも「黒い箱」の助けを得て動作させます。大型ジョンソンプラグ、頼もしげなカーボン・プレート、プレート損失125W。透明で柔らかい音。真面目一徹の811−3を聴いた後では、柔軟で躍動感あふれる音の世界に一気に引き込まれてしまいます。真空管の女王といっても過言ではありません。出力も21.8Wと、1000Vをかけた時の24Wに迫ります。初代「BIG−ONE」以上の出力になっているのは、改造のついでに+Bのマイナス側を「富嶽」のように0Vと10Vを選択できるスイッチをつけ、より高いプレート電圧が得られているためです(従来は我が家のAC100Vが少し高いため10Vで使って居ました)。A2ドライブの面目躍如です。プレート500V丁度になれば24Wをなっていたでしょう。
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2A3(CHINA)
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これも太くて柔らかい音が特徴ですが、さすがにこの出力ではDレンジがとれず、オケは上が詰まって苦しい鳴り方です。
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6B4G(RUSSIA)
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2A3のフィラメント電圧を6.3Vにした双子の兄弟です。2A3は中国製、6B4Gはロシア製とパチモン同士の対決ですが、世間一般の通り相場と同様、こちらのほうが細身の音になります。「BIG−ONE」では細さが気になりパラシングルでならしてやったりもしました。富嶽では8本使ってのパラプッシュもあります。MarkWではイントラとの相性が良くて、出力も2A3より少しよけいに取れますし、音の細いところはトランスがカバーしてバランスの良い音に仕上がっています。思わぬ拾いモノです。これがあるからアンプの「手入れ」が止められない。
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1619(RCA)
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2A3と同じ2.5Vのフィラメント電圧のメタルビーム管です。音は2A3とは正反対というか、繊細な高音を持ち、分解能感の高いものです。古楽器やチェンバロには最適です。惜しむらくはシングルでは5W弱しか取れないこと。ピーク音は甘くなってしまいます。「富嶽」でも同傾向の音でしたので、プッシュで聴く方が真価を発揮するでしょう。
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「その3 傍熱3極管たち」
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左から 6080、5998A、6336B、6RA8,50CA10,8045G、6C19P、6C33C
「BIG−ONE MarkW」動作一覧 Part3
NAME | Pp(W) | Eb(V)max | Ep(V) | Eg(V) | Po(W) | Ip(mA) |
6080(東芝)単管パラ | 13(per unit) | 250 | 264 | -120 | 5.2 | 59 |
5998(GE)単管パラ | 15(per unit) | 275 | 278 | -30 | 6.44 | 66 |
6336B(CETRON)単管パラ | 30(per unit) | 400 | 418 | -99.3 | 14.3 | 92 |
6RA8(NEC) | 15 | 350 | 283 | -21.5 | 6 | 53 |
50CA10(LUX) | 30 | 450 | 454 | -45 | 12.5 | 68 |
8045G(LUX) | 45 | 550 | 502 | -98 | 19.5 | 85 |
6C19P(RUSSIA)パラ | 11 | 250 | 259 | -93 | 6.4 | 80 |
6C33C(RUSSIA) | 60 | 450 | 274 | -113 | 7.7 | 58 |
6080(東芝) 5998A(GE) 6336B(CETRON)
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これらはレギュレーター双3極管と言われており、電流供給能力にすぐれています。音もたっぷりとした低域という点で共通しています。増幅度が低いため、パラにしてもシングルでは使いにくく、単管プッシュに向いています。6336Bはタフそうな黒鉛プレートとがっちりとした構造で、いくらでも電流が溢れ出てきそうです。6C33のアメリカ版とでも言うべき球です。 |
6RA8(NEC) 50CA10(LUX) 8045G(LUX)
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いずれもラックスのアンプに使われていたNECからのOEM球です。当時は球対石の出力競争の時代であったため、LUXのアンプは球の定格ギリギリ、AC100Vの電源電圧が少し高ければオーバーロードになるような設計でした。このため生き残っている球が少なく、新品未開封品には大変なプレミアがついています。50CA10の事はMY FAVOURITE TUBESにも書いているので省略します。6RA8はMT管ながら6BQ8等のMT5極管とは対照的に低域がたっぷりとしており、バランスの良い音を聴かせてくれます。8045Gは50CA10をもう一回り大きくしたような音で、あの845を彷彿とさせる柔軟でスケールの大きな音です。8045Gはキットにしか使われていなかったので保守用のニーズが少なく、中国等でも複製品が作られていないのは残念です。 |
6C19P(RUSSIA)パラ 6C33C(RUSSIA)
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6C33は函館に亡命したロシアの戦闘機フォックスバットに搭載されていたと言われている大型レギュレータ管です。耐震性を上げるためか電極板の厚みは半端ではなく、ズシリと持ちごたえします。音はこの球でしか出ない、コクのある彫りの深いもので、分解能感と豊かな量感が両立しています。 MTサイズですが、6C19Pもレギュレータ管です。6RA8を分厚くしたような音で、「富嶽」のパラプッシュでは良い思いをしました。レギュレータ管はヒーター電流が大きく、熱の処理にも困りますが、これはサイズ相応なのでカソフォロ球としていつか使って見ようと思っています。 |
「その4 傍熱多極管たち」
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上左から 6550(SVETLANA)、6550(GE)、KT88、KT90、6L6G、6L6GC、7591A、50HB26
下左から 6CA7(松下)、E34L(TESLA)、EL34(SVETLANA)、6GB8、EL156(RELEFUNKEN)
EL156(CHINA)、6V6,6F6GT
「BIG−ONE MarkW」動作一覧 Part4
NAME | Pp(W) | Eb(V)max | Ec2(V)max | 結合 | Ep(V) | Eg(V) | Esg(V) | Po(W) | Ip(mA) | Isg(mA) |
6550(GE) | 35 | 600 | 400 | 5結 | 422 | -18 | 240 | 14.3 | 82 | 5 |
KT88(TESLA) | 42 | 800 | 600 | 5結 | 479
| -19 | 240 | 16.3 | 84 | 3 |
KT90(YUGO) | 46 | 850 | 650 | 5結 | 421 | -15 | 240 | 19.5 | 106 | 3 |
6L6GB(TESLA) | 19 | 360 | 270 | 5結 | 268 | -12.3 | 240 | 7 | 70 | 6 |
6L6GC(RUSSIA) | 30 | 450 | 450 | 5結 | 424 | -10.4 | 240 | 11.3 | 70 | 4 |
7581A(PHILIPS) | 35 | 500 | 450 | 5結 | 424 | -13 | 240 | 14.3 | 81 | 3 |
6GB8(東芝) | 35 | 800 | 440 | 5結 | 411 | -13 | 240 | 16.3 | 81 | 3 |
EL156(TELEFUNKEN) | 50 | 800 | 450 | 5結 | 474 | -7.6 | 240 | 20.7 | 104 | 12 |
EL156(CHINA) | | | | 5結 | 502 | -11.2 | 240 | 20.7 | 98 | 12 |
EL34(SVETLANA) | 25 | 800 | 500 | 5結 | 275 | -12.5 | 240 | 8.4 | 79 | 12 |
| 25 | 800 | 500 | 3結 | 457 | -39 | | 11 | 54 | |
6V6(SOVTEK) | 14 | 350 | 315 | 5結 | 271 | -8.8 | 240 | 5.2 | 50 | 6 |
6F6GT(FILCO) | 11 | 375 | 285 | 5結 | 273 | -12 | 240 | 3.1 | 40 | 8 |
50BH26(松下) | 18 | 350 | 300 | 3結 | 282 | -52 | | 16.3 | 63 | |
6550(SVETLANA) 6550(GE) KT88(TESLA) KT90(YUGO)
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6550とKT88はプレートの構造からして全く同じ球で、音もよく似ています。ゆったりとした低域でメリハリのある音です。無信号時と最大入力時とでIpに殆ど変化が無く、安定な動作をしている事を示しています。 KT90はハカマの部分が無く、トップに空気抜きがあってMT管をそのまま大きくしたような構造です。プレートは巨大でEL156とほぼ同じです。 |
| 6L6GB(TESLA) 6L6GC(RUSSIA) 7581A(PHILIPS)
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この3つもプレート構造が全く同じです。プレートの電気特性も同じようで、GC、7581とプレート損失が大きくなるのに、ほぼ同じ点で動作してしまい出力を上げることが出来ませんでした。350Vがあればもう少しましな結果が出たのですが、「BIG−ONE」では280Vの次は420Vになってしまいます。プッシュプルの方が使い易い球です。 TESLAのKT88と6L6GBは同じ材料を使っているためか、音も非常によく似ています。
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| EL156(TELEFUNKEN) EL156(CHINA) 6GB8(東芝)
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TelefunkenのEL156がやって来た!では、EL156(TELEFUNKEN)はシングルでと書きましたが、あれはカソフォロの初代での話。ここではイントラの音が載るためか高域は華やかですが、低域には粗さを感じます。6GB8はEL156を目指した日本製ですが、プレート損失が小さく、B級に近いプッシュでないと同等の出力は得られません。音は低域は柔らかくて良いのですが、高域がキラキラしてしまって、音色に統一感がありません。中国製のは電極の構造までも全く同一で、足だけがオクタルです。しかし音は全く違います。柔らかさと華やかさを統一感のある音で表現します。この中では「BIG−ONE MarkW」とベストマッチ。 |
| EL34(SVETLANA)E34L(TESLA)6CA7(松下)
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この3本は名前は変わっていますが同じ球です。SVETLANAはリングゲッターのクリアータイプ、TESLAはチェコ製らしく赤色の色ガラス管(クリアタイプもあります)、松下は普通の管壁ゲッターです。これも6L6シリーズ同様25Wというプレート損失の為、KT88等の400V台の+B電圧が使えず、低い出力になりました。プレート、スクリーンともに耐圧が高くB級プッシュで大出力が得られるように設計された球です。 電気特性は同じでも、音はそれぞれ微妙に違います。SVETLANAはEL34としては例外的に柔らかい音で、クラシック向きです。 TESLAは、高域に芯のあるカッチリとした音ですが硬質感はありません。ピアノの再生が得意です。 松下は高域に輝きがあり少し派手目の音がします。ジャズ・ファンに人気があるようです。昔はラックスのパワーアンプ・キットA3600に付いてきましたが、今は新品ですと結構なお値段になっているようです。 |
| 6V6(SOVTEK) 6F6GT(FILCO) 50HB26(松下)
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6V6はいろんなタイプがありますが、これはカーボンスートのもの。サン・オーディオのキットに付いてきました。出力は前項のEL34と同じですが、聴感上は出力に余裕がないタイトな音がします。 6F6GTでは高域が落ち気味に聞こえます。6V6や6F6になると音が良い悪いと言うより、電圧増幅管も同じ高さの小型GTタイプにして揃えるといったような、視覚上の特徴を使った、作ることが目的というアンプになりそうです。 50HB26はかって松下の40AというOTLアンプに使われていたモノで、3結での内部抵抗の低さと、2本纏めればヒーター電源が100Vになってヒーター用の巻き線が不要になるという特徴があります。50CA10と同じですね。音は可もなく不可もなく、これといった特徴がありません。この点でOTLに向いているのかなと思います。 |
| 45種の球のテストを終えての結論
1.1kHzでの出力が20Wを越える球が続出した。カソフォロよりイントラの方が、グリッドがプラスになって電流が流れるA2動作での安定性に優れている。
2.イントラでは低域が張り出し、高域の倍音を良く出す。このため傍熱管でも直熱管ライクの音が出せる。
3.総ての球にトランスの音が乗る。カソフォロの方が、球の音の違いよくを聞き分けられた。「音色テスター」としては初代「BIG−ONE」の方が優秀であった。
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