MY FAVOURITE TUBES
電力増幅管
●● 50CA10 ●●
300B,50,245, 845と名球と呼ばれる球は世に数々あるなかで、たった一つだけ出力球を選べと言われたら、私なら迷わずこの50CA10を選びます。
かって無人島へ1タイトルだけLPを持っていくことを許されたら何を持って行くかというアンケートがありました。マタイ受難曲や合唱を押さえて第1位になったのはカルメンでした。それと同様に立派な音を出す球は他にありますが、愛すべき球というとこれしかありません。柔らかくて透明感がある音は他では得られません。使い込んでいくにつれて艶が出てきます。生産終了後20年は経つラックスのアンプやキットの交換用需要を当て込んで、中国製の球が市場に出回っているとこを見ても、隠れた愛好者が多いことが窺えます。惜しむらくは球の規格が趣味性を無視していたことです。足がコンパクトロンでなく、一般的なオクタルであったらもっと人気が表に出ていたことでしょう。
ヒータの規格だけが異なる6CA10も有りますが、私が真空管アンプに手を染め始めた時は既にNECの純正球が市場から姿を消し、ラックスキットのオプションとしてソケットや抵抗と一緒に50CA10を買うのが最も容易な入手方法でした。写真左がそのラックスマーク入りのものです。写真中央はNECオリジナル。写真右は商社ブランドのインターナショナルのものです。数年前秋葉に出回っていました。made in Japanとあるのに偽りがなければ、怪しい中国製ではなくNEC製の逆輸入ものですが、実物を手にするまではヒヤヒヤものでした。幸いロットナンバーがラックスブランドものと同じ位置、同じ字体で入っていましたので安心できました。
中国製なら秋葉でも日本橋でも買うことができます。ただ、中には定格内で使っているにもかかわらず赤熱するものもあるようです。少し高くても、万一の場合は交換してもらえるお店を選んだ方が良いでしょう。元箱入り純正も秋葉の某所に麗々しく陳列されていますが、あの値段では私も食指が伸びません。
「調理方法」はこのHPにプッシュプルの例があります。前段差動 50CA10ppや全段差動 50CA10/300Bコンパチppです。
シングルではこんな使い方も見掛けました。12AX7のSRPPに50CA10を直結にした所謂ロフチンホワイトです。前段、出力段とも傍熱ですので。12AX7より早く50CA10が立ち上がってもSRPPなら出力は0Vなので50CA10が赤熱する事はありません。シンプルでうまい回路です。実は全段差動直結 KT88ppは、この回路のプッシュプル版なのです。KT88で動作を確認したら出力管を50CA10に変える積もりだったのですが、KT88が「らしからぬ」暖かい音色をだすのでそのまま仕上げたものです。
以下にプレート特性、定格、ピン配置、代表的動作例を挙げます。
| ヒーター電圧 | 50V |
| ヒーター電流 | 0.175A |
| 最大定格(設計最大値) |
| プレート電圧 | 450V |
| グリッド正電圧 | 0V |
| プレート損失 | 30W |
| カソード電流 | 200mA |
| グリッド抵抗(固定) | 150kΩ |
| グリッド抵抗(自己) | 500kΩ |
| 静特性 |
| プレート電圧 | 250V |
| グリッド電圧 | -22V |
| プレート電流 | 80mA |
| 相互コンダクタンス | 14000 |
| プレート内部抵抗 | 570Ω |
| 増幅率 | 8 |
| A級シングル | AB1級プッシュプル |
| プレート電圧(V) | 250 | 250 | 300 | 350 | 400 |
| グリッド電圧(V) | -22 | - | -30 | -37 | -43 |
| カソード抵抗(Ω) | - | 200 | - | - | - |
| 入力信号電圧(Vrms) | 15.5 | 14 | 42 | 52 | 60 |
| プレート電流(零信号時)(mA) | 80 | 90 | 100 | 100 | 100 |
| プレート電流(最大信号時)(mA) | 95 | 95 | 180 | 180 | 180 |
| 負荷抵抗(Ω) | 1500 | 1500 | 5200 | 4000 | 5000 |
| 出力(W) | 6 | 5.5 | 24 | 28 | 34 |
| わい率(%) | 7.5 | 7 | 2.5 | 2.5 | 2.5 |
| * プッシュプルの入力信号電圧はグリッド・グリッド間 |
●● 250 ●●
これぞ正真正銘の名球です。ヒーター電圧が7.5Vと少し変わっているのと、異例に低いグリッド抵抗(10KΩ)さえクリアーすれば245なぞものの数ではありません。CR結合ではちと苦しいですが、締まった音がお好みの方はトランス結合で、豊潤な音がお好みの方はカソフォロで楽しめます。勿論オリジナルのロフチン・ホワイトもOKです。BigOneのようなユニバーサルアンプでもちゃんと鳴るのですからそれほど神経質になることはありません。
WE300Bも高価な球ですが金さえ出せば、本当の新品を足るだけ手に入れる事ができます。250の場合は新品とは程度の良い中古の事であり、特性の揃ったペアなぞなかなか手に入る物ではありません。その意味で、今後絶対に数が増える事がない本当の古典管です。プッシュで鳴らして見たい球ですがとても実現しそうにありません。2本だけ手に入れて「盆と正月」に聴いています。
これ「当時」は幾らくらいしてたんでしょうね。ステムの裾は何とボルト・ナットで固定しています。大量生産の消耗品の感覚です。だからロフチンで赤くなったり青くなったりしても平気だったのでしょう。大枚はたいた割りにはと、複雑な気分にさせられます。性能、価格(現在)的にも「同等」球であるPX25やDA30はもっと凝った造りになっています。当時はヨーロッパの方が先進国だったのですねぇ。
| ヒーター電圧 | 7.5V |
| ヒーター電流 | 1.25A |
| 動作例 |
| プレート電圧(最大) | 450V |
| グリッド電圧 | -84V |
| カソード電流 | 55mA |
| カソード抵抗 | 1.53kΩ |
| 負荷抵抗 | 4.35kΩ |
| 相互コンダクタンス | 2100 |
| プレート内部抵抗 | 1.8kΩ |
| 増幅率 | 3.8 |
| 出力 | 4.6W |
電圧増幅管
●● 7044 ●●
写真左から、GE7044、AMPLEX7119、PhilipsJAN5687WAです。この3者はピン配置が同じでそのまま差し替えられます。次表は主な特性を比較したものです。3定数はすべて120V/36mAでの値です。
| 7044 | 7119 | 5687WA |
| ヒーター電圧(V) | 6.3/12.6 | 6.3/12.6 | 6.3/12.6 |
| ヒーター電流(A) | 0.9/0.45 | 0.64/0.32 | 0.9/0.45 |
| プレート電圧(V) | 300 | 300 | 330 |
| プレート損失(W) | 4.5 | 4.5 | 3.75 |
| プレート損失両ユニット(W) | 8 | 8 | 7.5 |
| プレート内部抵抗(Ω) | 1.75k | 1.6k | 1.56k |
| 増幅度 | 21 | 34 | 18 |
| 相互コンダクタンス | 12000 | 15000 | 11500 |
いずれも小型の出力球顔負けのヒーター電力大食漢の双3極管です。内部抵抗が非常に低くく、低電圧でも大きな出力が得られます。ドライバーもカソフォロもと調子に乗って使っていると、出力段のヒーター巻き線容量が足らなくなるなんて事に成りかねません(その点50CA10なら、巻き線を食わないので楽です)。その分低インピーダンスで電流を多量に流せる力持ちでもあります。5687<7044<7119の順にたっぷりとした量感のある音になります。相互インダクタンスの大きい順でもあります。また発振もこの順にし易くなりますから、7119は注意が必要です。価格で見ると5867や7044は1000円以下ですが7119は2000〜3000円位。7044なら少々数を買っても堪えないし、音の量感も7119に遜色なく、発振もしにくい、ということでもっぱら愛用しています。またこのクラスなら、2ユニットパラに使うと8W程度のプレート損失に耐えられます。出力管として使うと、オール7044のアンプが出来上がります。9番ピンがプレートになっていたり、KとGの順番が第1ユニットと第2ユニットで違う点は要注意です。
●● 6922 ●●

写真左からMullard/6DJ8,SOVTEK/6922,SIEMENS/E88CC,PhilipsJAN6922,東芝6R−HH2,NEC/6R−HH2,SVETLANA/6N1Pです。
7044や5687についで内部抵抗の低い双3極管のグループです。特筆すべきは低ノイズであることです。12AX7等を初段に使う場合はある程度選別してノイズの少ない球を選びますが、その必要がありません。
真空管プリアンプでは12AX7に変わって6922を使っています。また、両ユニットの間にセパレーターが入っており、左右を1本の球で賄ってもセバレーションの劣化がありません。「富嶽」でも初段に使っています。
初段にもドライバー段(6DJ7はプレート電圧が低いので要注意)にも使える重宝な球です。しかし、初段もドライバーも6299にしてしまうとゲインが高くなり過ぎて過剰なNFをかけるはめになります。今度は相互コンダクタンスが大きいので発振に悩まされます。
型番に違いによって少しずつ音が違います。6DJ8は相互コンダクタンスが大きいので特に発振対策に気を配ります。E88CCは6922と同じはずでが、SIEMENSのE88CCは6DJ8に近い性格で、6922より音が豊かで艶がありますが発振しやすい球です。
6R−HH2は日本製の6922ですが、少しあっさり味になります。相互コンダクタンスが少し低いと思われます。6922の中でも特に低ノイズなのは日本製だからでしょうか。6N1Pはさらに相互コンダクタンスが低く、最早6922一族の音ではなくなります。値段の安いのだけが取り柄です。
入手のし易さ、安価という理由で、最も一般的と思われるPhilipsJAN6922をよく使います。
| 6DJ8(ECC88) | 6922(E88CC) | 6R-HH2 | 6N1P |
| ヒーター電圧(V) | 6.3 | 6.3 | 6.3 | 6.3 |
| ヒーター電流(A) | 0.365 | 0.3 | 0.3 | 0.6 |
| 最大定格(設計中心値) |
| プレート電圧(V) | 130 | 220 | 150 | 250 |
| プレート損失(W) | 1.3 | 1.9 | 2 | 2.2 |
| カソード電流(mA) | 25 | 20 | 20 | 20 |
| グリッド抵抗(Ω) | 1M | 1M | 0.5M | 0.5M |
| ヒーター・カソード間電圧(ヒーター正)(V) | 150 | 60 | 200* | 100 |
| ヒーター・カソード間電圧(ヒーター負)(V) | 150 | 120 | 200* | 100 |
| 動作例 |
| プレート電圧(V) | 90 | 90 | 90 |
| グリッド電圧(V) | -1.3 | -1.4 | -1 |
| プレート電流(mA) | 15 | 12 | 8.5 |
| プレート内部抵抗(Ω) | 2.64k | | | 4.4k |
| 相互コンダクタンス | 12500 | 11500 | | 7500 |
| 増幅率 | 33 | | 36 | 33 |
| *直流成分100V以下 |
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