CR減衰型イコライザー 真空管プリアンプ

その1 12AX7 4段増幅 CR減衰型イコライザー

  20年以上前、LUXKITで作った50CA10の音に気をよくした私は、無謀にも「プリも真空管で作って見たい」と”師匠”にプリアンプの回路図を書いて貰いました。その時、渡された一枚の回路図だけを頼りに製作したのが写真のアンプです。
  下の回路図では出力の先にはボリュームとバッファー段が必要です。1本の12AX7で2段増幅のフラット・アンプを構成し、2つのフラットアンプの間にイコライザーを置くという構成になっています。コンストラクションも、回路図通りに前面から入って左右に信号が別れ後面から出ていきます。その途中にボリュームがあり、左右独立にしてバランスボリュームを省いています。前面パネルには入力端子、アームのアース端子にボリュームと最低限のものしかありません。変に信号線を取り回してトラブルになるよりは、シンプル・イズ・ベストという考え方は今も変わりません。
  しかし、信号レベルが低く増幅度が大きなプリアンプはキットのメインを仕上げただけの超初心者の手に負えるものではありませんでした。初段の球をシールドし、直流点火で且つヒーター配線は球毎に独立させ、デカップリング・コンデンサーの容量を上げてもハムの嵐は消えてくれません。ハムの中から聞こえてくる音の素性が良いだけに尚更悔しい思いをしました。CR減水型イコライザーを高μの12AX7で4段増幅するのですから、ハムが出やすいのは当たり前でしたが、当時はそんな事も分かっていませんでした。結局、仕事が忙しくなった事もあって道半ばで自然消滅となりました。

  製作を再開した時にはそれから10年が経っていました。師匠の突然の死に直面し、自分なりに供養になる事をしたいと思ったのがきっかけでした。この時にはオシロも多少使える状態になっていたので原因を切り分ける事ができました。その結果
 1.中古のトランスのシールドが悪いので、電源部を別ケースに分ける。
 2.アース回路がループになっていたのでグループ毎にまとめ直す。
 3.3,4段目を構成する球にもシールドを付ける。
という手を打ってハムを退治する事ができました。
  この回路のイコライザー部にはロールオフ(高域減衰)が付いていません。実は入力に直列に入っている50Kの抵抗と0.0015μのコンデンサーで、増幅する前に落としているのです。なんで、こんな事をするかというと、MCトランスを通してからこのアンプに信号を入れる事が前提となっているのです。そのための耐入力対策です。トランスはオーディオ・メーカーのものは高いので、タムラの通信用のものを使っています。これで聴くLPの音は絶品で、たちまち我が家のシステムの中核収まりました。


12AX7 4段増幅 CR減衰型イコライザー回路図

その2 6922 4段増幅 CR減衰型イコライザー

  12AX7のプリには満足していましたが、デジタルと「相性」の良い管球アンプによるマルチが完成し、CDプレイヤーも変えて「デジタル臭さ」がとれてくると、いつしか新譜の無いLPよりCDの方を聴く時間が増えてきました。そんな時、INFTYのFAVやFJAZZのFORUMで真空管フリークの人たちと触れ合うにつれ、「もう一辺、弄ってみるか」という気になりました。
 CDの音に慣れてしまうと、LPでは高域の延び、開放感が気になります。MCトランスを外すと球の音がストレートに聞こえてくるのが分かっていましたが、S/Nはがくんと落ちます。ハムではなくて、高域のシャーというノイズです。ロールオフを最後部へ回してS/Nを稼いでも満足できるレベルまで落ちてくれません。
  結局、球をメインアンプの前段用として使っていた6922に変えて全体のインピーダンスを下げるとともに、各フラットアンプ内は直結にしてカップリング・コンデンサーの数を減らしました。また、各フラットアンプの初段のプレート電圧を思い切り低くとっているのは、耐圧が50VまでしかないMUSEをカソードパスコンに使いたかったからです。MUSEはニチコンの汎用品とあまり変わらない価格で音の良い電解コンデンサーです。
  カップリングコンデンサーは音への影響大です。いろいろ試しました。またこのカップリング・コンデンサー、勿論フィルムコンですが、モノよってはもらしてはいけない電流を漏らして呉れます。特に、どこでも手に入る「指月」の黄色い奴は全くあてになりません。同じ「指月」でもASCの方は非常に優秀なのに。前者を「容量増強用」にあちこちで使っていた私にはショックでした。ASCのフィルムは耐圧が400Vまでしかないので使用場所に制限がありますが、音質的にはこれがベストでした。

6922 4段増幅 CR減衰型イコライザーアンプ回路図
*1.C1 47μ/3500Vの電解ブロックコンデンサー
*2.C3 ASC 1μ/400V
*3.C4 MUSE 1000μ/50V

プリアンプの内部
 中央に横一列に並んでいるのが各ユニットのデカップリングコンデンサーです。その後ろは電源部、前が信号部と分けています。右上に+B用の定電圧回路を纏めていますが、ここは最初のバージョンで電源トランスが載っていたところです。

左 P2511SR
中 P65CSR
右 延長シャフトとシャフト受け


異様に大きなボリュームが入っていますが、東京光音電波のP65CSRです(左図参照)。ボリュームもプリの音質を左右します。最初はアルプスのディテント・ボリュームを使っていました。カーボン摺動のものよりはましですが、音に延びが無くネクラな音になってしまいます。前面パネルと真空管の列の間にあまり余裕がないので、奥行きのあるものは使えません。東京光音電波のP2511SRを使っていました。どちらも、基板に付けられた抵抗を切り替えるタイプですが、抵抗の容量と接点数が異なります。それ以上に、65のもつプロ用部品らしさに惹かれます(NHK御用達の特注部品)。共回りを避けるため3本のネジでパネルに固定するようになっていますし、クリックストップ用にギアが一枚入っています。このギアの押しつけ具合を変える事によって回転時のフィーリングも調整できます。
  65を使うには真空管とデカップリング・コンデンサーの間に固定してシャフトを延長させてなくてはなりません。メーカーならお茶の子さいさいですが、なかなか適当な部品を見つけられませんでした。それが、ある日デジットで延長シャフトとその径にぴったりのシャフト受けを見つけました。秋葉を捜しても見つかりらなったのが、こんな身近にあったとは。まさに灯台元暗しでした。
 音は誰の耳にも明らかな程の差がありました。太く、力強い音です
その3 SRPP+μフォロワー 2段増幅 CR減衰型イコライザー


6922 3段増幅イコライザー 回路図
  音質的には充分満足の出来るイコライザーアンプなのですが、CDのS/Nに一旦慣れてしまうと、ザーという真空管の熱雑音がどうしても耳につきます。段数が多いと通過する球の数だけノイズが蓄積されてくるのではないかという考えにとりつかれ、段数減らすことにしました。6922の前半2段はそのままにして、後段をSRPPの一段にしバッファー段も省きました。この時の1kHzでのトータルゲインは45dBで、音量は充分でした。
  しかし、これでも常用のサテンM21Xでは「適度な」ボリューム位置で、アームを上げるとシャーノイズが聞き取れます。カタログでは出力が2mV有ることになっていますが、実力は1mV程度です。同じノイズでもスクラッチノイズは物理的に接触しているのだからやむを得ませんが、アンプのノイズは聞こえないようにしたいものです。
 更に段数を減らして前半も6922のSRPPにして2段にしてしまうと、サテン以外のオーディオ・テクニカAT33EやダイナベクタKARAT17Dのような出力1mV以下のカートリッジは使い物になりません。この時のゲインは30dBでした。
  なんとか2段でもっとゲインを稼ぐ方法はないか。12AX7ならゲインが上がりますが、インピーダンスが高いのでボリュームの後のバッファーは付けた方が良さそうです。ということで、前段12AX7のSRPP、後段6922のSRPPにすると39.6dBまで上がりました。この時、12AX7の前段の増幅率は83倍でしたが、後段の6922は24倍で、まだ搾り取れる余地があります。そこで、後段を6922のμフォロワーにすると理論増幅率に近い30倍にまで上がり、トータルゲインで41.6dB/120倍となり、3段増幅に可成り近づけることが出来ました。

SRPP+μフォロワー 2段増幅イコライザー 回路図
 音はC2が回路図のOSコンだけだとスッキリはするものの、低域に不満が残るのでMUSEの330μ/25Vをパラりました。これでもイマイチだったので更に、ヒーター整流用に使っていた6800μ/16Vを追加すると音が大幅に変化し、分解能感が高くて艶のある非常に良い音になりました。カソードパスコンは高級品より容量勝負が正解のようです。
  皮肉なことに、ここまでやってやるとシュアー(V15−TYPEW)やエンパイヤのMMカートリッジの音が、これまでの柔らかさの上に透明感・分解能感が増し、これまで聴いたことのないハイレベルの音を聴かせてくれるようになりました。サテンまではダイレクトに繋ぐとして、オーディオ・テクニカAT33EやダイナベクタKARAT17Dでは割り切って、トランスかヘッドアンプを通すことにしました。

ヘッドアンプ 回路図
  アンプはFET一段の簡単なもので、約11倍の増幅度です。電源はプリアンプ本体内に、36Vのツェナーダイオードで電圧を規定したFET定電圧電源を追加し、電源アダプター端子を使ってヘッドアンプに送り込みます。1kの抵抗と1000μのコンデンサーで左右のデカッサプリングを行います。
  入力トランスは、真空管プリを最初に作った時に買った物で、タムラのTSK−25です。いわゆる「オーディオ用」ではありませんが、亡き「師匠」からシールド性能が抜群だからと勧められて買いました。今は廃番ですが、TKS−22が相当品のようです。下の端子ボックスは自作です。入力インピーダンス100/200/300Ωに、出力インピーダンス50KΩで、300Ωを使えばヘッドアンプとほぼ同じ増幅率になります。

入力トランスとヘッドアンプ 

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