不死鳥プロジェクト

2004/6/20
last update 2012/10/14
コンセプト

  「富嶽」は「富嶽改」としてモノアンプに変更中ですが、残った巨大パワートランスPMC500Mをどうするか。いろいろ考えた末に400V-DC500mAというパワーを活かすには、倍電圧整流して800V級のシングルステレオアンプしかないという結論に達しました。これまで、安全のため電源電圧は500V以下を守ってきましたが、その戒を解くときが来ました。

  製作中に感電死せずに帰還できることを祈念して「不死鳥」と名付けます。

  1.対象は845、830B、811、805、211、SVETLANA572-30ですが、845以外は
    この電圧ではA2動作になるため、万全を期してカソフォロでなくトランスドライブとします。

  2.出力段の平滑回路は、下手に弄って感電することがないよう半導体でなくチョークを使う。

  3.倍電圧−等電圧の切り替えSW付けて調整は等電圧で行い、倍電圧ではプレートの
    電圧チェックのみにとどめる。

  4.フィラメントはこれまでの「調整抵抗」による定電力点火ではなく、定電流点火とし、
    その電源もシャーシ内に収める。

  


回路







シャーシ

  初段は「富嶽」同様6922を使います。トランスをドライブするには6L6GCに相当する7581を使い、パワードライブします。この段は定電流動作にしています。インターステージトランスはソフトンのRC-20を使います。このトランスはコアが大きく20〜30mA程度の電流を流せるので、「イントラ反転」せずに使います。トランスの2次側FETでカソフォロ同等回路を作ってA2動作で流れてくる電流を処理します。

  主巻線の320Vを倍電圧整流し900Vを得ます。チョークはノグチのPMC1520Hにしました。フィラメント電源は4回線有る6.3V-4Aの巻線を2回線ずつシリーズにして12.6V-4A2回線として使います。

                   「富嶽」解体


天板に450x300x1mmのアルミ板を取り付けて「不死鳥」用シャーシ完成


               トランス類を取り付けて組み立て完了


シングルで30W


  手前、左から211、838、815、向こう側830、845。830だけプレート損失60Wとやや「小ぶり」ですが、他は総てプレート損失100Wの「ハンドレッドワッター」です。805に至っては125W。プレートはカーボン、また830も含めてフィラメント電圧は10Vの大飯ぐらいです。

  入力/出力特性は830を除いて総てプレート電圧800V、カソード電流125mAで開始していますが、入力が増えてくるとカソード電流が幾分増大してきます。
最大出力(W)最大出力時のカソード電流(mA)バイアス電圧(V)
83834151+18
80528144+21
21132137-27.7
84538139-98.3
83012.578-9.3

  両対数とすると線が重なってしまいますので、リニアーで表示しています。845以外は増幅率が同じ程度であり、入力/出力特性データが同じ様なカーブを示しています。
  845の38ワットを筆頭に皆ほぼ30Wの出力を示しています。オシロで観察してピーク高から電力換算していますので、電力計で測定すれば出力はもっと伸びるでしょう。この音の伸びと力強い中低域の張りが、共通の特徴と言って良いでしょう。


特性


  GE211によるパワーバンド特性です。高域はどの出力でも50Kまでフラットに伸びており、イントラアンプとしては非常に広帯域になっています。
  NF抵抗に320pのバイバスコンデンサーを入れています、620にするとリンギングが無くなりますが、音が少しこもり気味になるので320pにしています。
  低域はOPTの特性になります。橋本のH30-5Sは30W/30Hzとなっていますが、30Hzが通るのは15Wまででした。24Wでは50Hz以下になるとピーク値は保つものの、波形が歪んできます。ダンピング・ファクターは3.3でした。

  クロストーク特性です。+Bはチョークだけですが、電力増幅段は半導体による平滑回路を採用しているため、20Hzまで1KHz並の特性値が出ています。

フィラメント回路の改良


 点火から時間が経つと、フィラメント電圧が上がって来ることに気が付きました。定電流ダイオードは温度が上昇してくると電流値が低下してくる性質を持っています。定電流ダイオードと抵抗を組み合わせて「電圧」を作っていますが、電流が低下してくるとこの部分の電圧が下がってきます。LM338の「アジャスト」と「アウト」電圧の値は1.25Vになるように制御されますから、出力電流が増加してと0.1Ωx出力電流の部分で電圧が増加することによって辻褄が合わされます。
 ここの精度を上げるために、電流も三端子レギュレーターで作ることにしました。LM317の「アジャスト」と「アウト」の間に240Ωの抵抗をかまして、5.2mAの定電流回路を作り、ダイオードと入れ替えました。


8年後のメンテナンス
2012/10/14

トランスドライブの見直し

ドライパー球のプレート電流を16mAから25mAに増やした。
インターステージトランスによる負荷をOPTと同様と考えてみると、


初段の6922は1V入力でp-pで68V振れる。68/2.8=24で6922の増幅度33からすれば妥当な値だ。7581のプレート電圧は実効325Vになる。三結のプレート特性からすると、3.5k負荷の時には高圧側でピークアウトしている可能性がある。プレート電流を増やして少し「右上」へ移動(青線から赤線へ)させた方が良い。

ドライバー球を7581から変更することも考えてみた。 「規模」で近いのは6L6GCだが、三結のプレート特性からするともっとプレート電流を増やさないと、高圧側でピークアウトする。宍戸さんの本でも40mAくらい流している。他にEL34、6GB8、50CA10も検討してみたが、皆6L6GCと同じ理由で採用できない。

しかし、インターステージトランスの重畳電流量の値については、「2次側が開放であれば、負荷インピーダンスは無限大と考える」という言がある。これならどんな少ない重畳電流でもOKになる。

また「一次巻線のインピーダンスはドライバー球の内部抵抗と同じなのが最良で、内部抵抗>イントラの一次巻線のインピーダンスだとF特が狭まり、反対だと広帯域になるが高域にピークが出たりする」とも有る。

イントラの負荷をどう理解すればいいのか釈然としないが、ロードラインに関係なく、一次巻き線のインピーダンスより低い内部抵抗の球に、20〜30mAの電流を流す(RC-20の場合)という考え方を受け入れるなら、殆んどの五極管やビーム管が、3結では1kΩ以下になるので使う事ができる。

ものは試しで、ドライバー球を取り替えてみることにした。
とは言うモノの、実はPMC500の6.3V/4Aのヒーター巻き線は4本とも使用済みで、前段用の6.3V/2Aが残っているだけ。6922が2本で0.6A使っている。1.5A以上有る6CA7、6BG8、KT66、KT88等は使えない。0.9Aの6L6を20%のオーバーで使う位しかない。それでもプライマリーを調整しているのでドロッパー抵抗が必要になる。7581は0.8Aで10%オーバーだった。

テスラの6L6Gはガラスが分厚くて、他の球にないズシリとした手応えと硬質ガラスのクリスタルな質感がある。

音のグレードがグンと上がった。
質感が高く、メリハリがあって重量感のある音だ。
こんなものだろうと長い間7581で聴いてきたが、もう取り替えて比較試聴するまでも無い。





ドライバー球の交換でこんなに良くなるなら、Gmの大きな球は是非試してみたい。ヒーター巻き線の制限があるが、私の好きな球50C-A10はヒーター巻き線が不要だ。

ヒーターがac50Vなので左右2本を直列にして100Vに繋ぐ。コンパクトロン→US8ピンの変換ソケットからヒーター端子を片方ずつ出して繋ぐ。もう一方は普通NCになっているUS8の6番ピンを利用する。こちらはアンプ内で配線しておく。

838も、845も805も、どの出力球を聴いても50C-A10の音になる。シングルで35W出る巨大50C-A10を聴いているようなものだ。

これはこれで良いけれど、球の違いを楽しむのなら6L6の方が向いている。

ここまでドライバー球の音が影響するのなら、出力球と同じ球をドライバー球に使うという佐久間アンプは非常にリーゾナブルだと思う。




電源部の改良

「New Big−One」/電源部の改良と同様の検討を行った。


まず「New Big One」と同様に2.5V-6Aのトランスを付けて6.3V*2と6.3V+2.5V選択できるようにした。


ところが6.3V*2ではフィラメント回路の発振が頻発するようになった。
巻き線の容量が不足する時には、抵抗を加えるという対処法がある。
手持ちの0.33Ω/10Wのセメント抵抗を2つの巻き線の間に入れたら無事発振が止まった。デュレーションは50%を超えるので可成り熱くなる。0.22Ωでは発振が止まらないので0.68Ω/10Wをパラにして0.34Ω/20Wとした。


次に、フィラメント電源のレギュレーターをLM338からLT1084に変更した。
NEW BIG ONEと同様、6.3V+2.5Vでハンドレッドワッターの10V/3.25Aをクリアーできるだろうと考えたが甘かった。出力端子にダイレクトに付けた0.1Ωのセメント抵抗を外しても、これ以上フィラメントからのハムを低減しても変わらないレベルまで出力電圧を調整すると、8.75Vしか得られなかった。830Bの10V/2Aだと9.5Vまで上げられるのだが。10%低下の9Vでは使いたい。
かといって6.3V*2を使ったのでは放熱はLM338の時と変わらない。LT1084に変更した意味がない。

3.25Aの直流を得るには巻き線の容量は1.8倍の5.85Aが適正値だが、4Aしかない。6.3V/4Aを並列にして8Aにすれば銅損による電圧降下分を上げられるのではないか。
やってみたが、46%のオーバーを是正しても0.1Vくらいしか上げられなかった。

もう0.5V位欲しい。そこで閃いたのがプライマリー側での調整だ。PMC500には引き込み線の電圧変動を調整するために95V、100V、105Vのタップがある。現在はオーバー気味なので105Vで使っている。これを100Vにすれば約5%のアップになる。
他の電源は下げる方向で調整しなければならない。+B巻き線は20Vの調整タップがあるので320Vから300Vにダウンする。このプラスマイナスで無電流時の電圧は900Vから、880Vになった。
ドライパー段は+Bと連動するし、初段とバイアスは定電圧になっている。 6922と7581のヒーターは、纏めて6.3V/2Aの巻き線から取っている。ここが7Vになっていたので、0.33Ω/5Wのセメント抵抗を入れたら6.27Vになった。

これで9.1〜9.3Vで使えるようになった。
このアンプで使用不可だった6.3V/4AのSV572も、SWで2.5Vのトランスを切り離せるようにして、AC6.3V/8Aから6Vで使えるようになった。



+Bは以前からリップルフィルターが弱かった。チョークと平滑回路を形成するコンデンサーは100μ欲しいところだが、2個直列にするので50μになってしまう。倍電圧整流に使っているコンデンサーも、どの程度平滑に効いているのか判らない。チョークで左右振り分けする前に100μ/450Vを2個と50Ωの抵抗のCRフィルターを入れた。スペースが無いのでOPTの真下に入れた。電源オン時のトランスの唸りが可成り減った。

トライバー段の+B2も、FETリップルフィルターのドレイン−ゲート間、ゲート−アース間の抵抗をそれぞれ20kから50kへ、200kから500kに変更し、電圧降下を防ぎつつ時定数を上げた。

これで、「不死鳥」も大分S/Nが改善された。
無電流時の電圧が880Vまで低下したので、いざとなればFETによる平滑フィルターを入れる事も出来る。






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