真空管プリアンプ〜最終版

2004/7/9
update 2012/9/3
コンセプト

 ソフトンさんのイコライザーアンプMode4の試作品を試聴させていただきました。出力が大きくとれ、S/Nは高く、音の分解能が良いアンプで、値段は程々。非常に優れたアンプでした。

  しかし、よくよく考えてみると、今LPを聴く意味はCDが出る前とは違うように思うのです。今やLPは音楽を聴くためにかけると言うより、「わざわざLPを取り出して聴く」ためにかけるというほうが正確ではないでしょうか。
 CDだと、ある一定の水準に達していれば、いろんな音を許容する事が出来ます。それには、趣味ではありますが、家電製品のような手段としての意義もあります。しかし、LPは100%こだわりの世界です。自分の中にLPはこんな音というのがあり、それに極力近い音が出て欲しいのです。そのためにはどんなに優れたものでも、自分の中にある音と違っていては、意味がないのです。
というわけで、またまた、イコライザーアンプをつくることにしました。このHP上でも三度目です。

 基本的には、昨年秋の真空管プリアンプ〜2段増幅CR型フォノイコライザーのアップグレードですが、これまでの改装と違って、もう一度シャーシから作り直しました。
製作



[シャーシ]
 リードのS21(400x150x65) を使いました。底蓋の無いいわゆる「弁当箱」というやつです。アルミのスポット溶接造りですが、板厚は1.4mmあって強度は充分です。これにラッカースプレーで塗装しました。

[パーツ]
 殆どのパーツは前作プリアンプを解体して使い回ししましたがトランス類は新規です。
 高圧電源にはノグチのPM36050Mを使いました。360〜240V間40V毎にタップが出ていますし、調整用に20Vのタップもあります。容量はAC50mAとプリアンプにぴったりです。
 ヒーター用には菅野で0-8-10V/1Aが2系統あるものがニノミヤに在庫があり、2系統並列で使いました。
 MC用の入力トランスにはソフトンの新製品PLT-1を購入しました。オルトフォンのような極低出力電圧のカートリッジは無いので一次直列の40Ωで使用しています。

[レイアウト]
 細長いシャーシを縦長で使い、電源部は後ろ、回路部は前とレイアウトで交流のフラックスの影響を避けています。画像の上2/5、小型のヒートシンクまでが電源部です。ACは最後尾から入り、トランス、整流、安定化電源と続きます。電源スイッチとパイロットランプもシャーシ上にして、引き回しによる交流ノイズの混入を極力避けています。
 信号は手前の最前部からMC-MMの切り替えスイッチを経由して入ります。シャーシ上の黒い箱はMCトランスです。電源ラインやデカップリング・コンデンサーは中央の平ラグに集めています。出力は電源部の手前でシャーシ上部に出しています。


[回路図]


 6922の2段増幅の後12AU7のフラット増幅という構成は前作と同じですが、6922は2球使うSRPP2段ではなく1球で済ませています。また直結にしてカップリングコンデンサーを省いています。さらに2段目のプレートから初段カソードに6dBの帰還をかけて歪みを軽減しています。この結果MCトランスを含めた増幅度は2380倍とソフトンさんのModel4とほぼ同じゲインに仕上がりました。
 MCトランスの負荷抵抗は30KΩになっています。Model4ではデノンDL130にあわせて13KΩ(18Kと47Kのパラ)になっています。40Ωで13KΩなら、100Ωのサテンなら2.5倍して30KΩ と推定しました。MM は通常47K受けですが、30Kになっても問題があるとは考えられないし、MCトランスをスルーしてサテンを使う場合は47Kより小さい方が良いと判断して、敢えてMC、MMとも同じ30KΩとしました。

 +B電源は左右のチャンネル別々に安定化しています。FETでなくダーリントンの石なので発振防止の抵抗は不要と考えていましたが、メインアンプに繋いで、音だししてみると、盛大にブーン。オシロで見ても明らかに発振しています。とりあえずベースに10KΩを当てると、たちどころに消えました。
 ヒーター電源の電圧は、ノイズが少しでも減るように6.3Vでなく6Vに設定しています。


 [試聴]
 ちょっとゲインが高すぎる傾向はありますが、分解能が高く、聴感上S/Nはこれまでの作に比べて大幅に改善されています。シャーシから作り直した御利益か。音は6922と12AX7の違いかソフトンのに比べて音に潤いが有ります。

 これまでは真空管だけで(MCトランスを使わず)サテンを十分なS/Nと音量で使えるように苦労してきました。今回は、それを諦めてMCトランス組み込みで製作したところ、MCトランス無しでもS/N、音量とも満足できるモノが出来上がりました。皮肉なモノです。とにかく、これで自作プリアンプに対する20年間のモヤモヤが吹っ切れました。

特性

 イコライザーはLOBSさんのRIAA CR型イコライザー・シミュレーターで計算した値で製作しています。計算では+0.3dB〜-0.0dBに見事に入っていますが、実測値ではローエンドとハイエンドでずれが見られます。それで24KΩの抵抗を21KΩに変更したのが「自作2」のグラフです。20〜40Hzでは0.6dB程度プラス側にずれていますが、それ以外は0.2dB以下のずれに収まっています。
 

サブソニック・フィルター

 ソフトンのMCトランスを通すと、特性でサブソニックフィルター不要になりますが、スルーで使うことが多くなりそうなのでサブソニック・フィルターを入れました。
 12AU7のカソードのカップリングコンデンサーを0.47μに変更し、コンデンサーの出側を17KΩの抵抗でアースします。

   f=0.159/(r・c)

から、ほぼ20Hzで-3dBのサブソニックフィルターになります。




ノイズの更なる低減

2012/9/3

 このプリを完成させてから8年になる。当時、自分としてはこれ以上S/Nは上げられないと思っていたが、回路図を見直すともう少し手を入れる余地があった。

その1)SRPPの電流帰還
6922直結2段の前段は6dBのNFBとRIAAイコライザーによってノイズが低減されるが、最終段の12AU7のSRPPのノイズはそのまま出力に現れる。18.6dB(8.5倍)のゲインがあるが、SATINのカートリッジで聴いている限り、入力トランスなしでもボリュームにはまだ余裕がある。ここに電流帰還をかけてここのゲインを下げる事にした。

実際にはSRPPの下段カソードのパスコンを外すだけだ。 上段球は(260/2)V/4mAから、16.25kΩの負荷抵抗として働いている。 1kのカソード抵抗との比1/16.25=0.0615が帰還係数となって、8.5/(1+8.5*0.0615)から増幅度は5.6倍に下がり、3.6dBのNFBが掛かった事になる。



その2)リップルフィルターの見直し
ダーリントン接続のトランジスタを使ったリップルフィルターでは、ベースに現れたのとほぼ同じ電圧がエミッターに現れる事を利用している。コレクターとベースを結ぶ抵抗と、ベースとアース間のコンデンサー容量の積がリップルフィルターの時定数となる。 これを増やすことにした。30kΩには36kΩを追加して66kΩとし、コンデンサーは+B3のと交換して22μから100μに増やした。耐圧が450Vから350Vに下がるが、ツェナーダイオードで320Vに固定しているから問題ない。
これによって時定数は10倍大きくなった。

その3)ヒーター直流点火回路の見直し
LM317の出力電圧を決める抵抗が大きすぎて、不安定になっている可能性がある。 Adjust-OutpUt間が1.25V/1KΩで1.25mAしか流れていないが、ここは5mA以上流す必要がある。
1kΩを200Ωに、3.8kΩを800Ωに変更した。出力電圧は6.23Vとほぼ計算通りの定格運転になった。



結果は上々で、これまでスーパーウファーに近づくと聞こえていたハムが無くなったし、P610DA、P610MA各4個で構成しているサブウーファー、スコーカーからも真空管ノイズだけでハムは無くなった。多分2)が最も効いているのだろう。半導体リップルフィルターは半導体内部での平滑コンデンサー容量アップ効果が大きく、外部抵抗やコンデンサーの容量にはあまり気を遣って来なかった。しかし耳で聞いてハッキリ判る効果が出るとなると、考え直さねばならない。


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