差動アンプの音の秘密は定電流回路にあった !!!

2003.6.28
ぺるけさんが流布させた差動真空管アンプの音や定位の良さは何に基づくものなのでしょうか。カソードの定電流回路で交流信号を遮断し、+B電源の平滑コンデンサーが信号回路に入らない事が要因にあげられています。非常に合理的な説明です。
 しかし、それだけでしょうか。おそまきながらフィラメントの定電流点火をやってみて疑問が湧いてきました。音に共通のテイストがあるのです。



 テストに取り上げたのは、シングルアンプの「ZERO-ONE」です。これはサンオーディオの最廉価モデルを改造して245/2A3/300Bコンパチ直結シングルアンプにしたものです。いろんな回路をこのアンプで試してみて、最初のユニバーサルアンプ「BIG-ONE」の前駆的モデルとなったのでこのように銘々しました。83の水銀発光を楽しむためにタイマー・リレーでヒーターだけ前もって加熱しておくという面倒なことをしています。点火は338T(大げさですが)で定電圧点火にしています。
  キット自体は非常に良心的な品物です。3ピンの脱着電源ケーブルがこの約5万円の品に付属しているなんて他では考えられないことです。しかし「富嶽」ができあがると、使用パーツのスペックの弱さが露呈してしまい、部屋の隅で埃を被っておりました。
  テストをする前に、300Bアンプとして少なくとも球がその力を発揮できるよう、少しだけ手を入れました。前段は12AX7のSRPPですが、出力管と直結にするため±電源とし、300Bのグリッド電圧をゼロにしています。このため入力コンデンサーが入っています。カップリングコンデンサーがこの位置に来たと思えば良いでしょう。プラス側の電圧を下げて、300Bのグリッド電圧をマイナスにし、+B電圧を有効に利用できるようにしました。プレート電圧−カソード電圧が+B電圧で、グリッド電圧−カソード電圧が実際のグリッド電圧です。カソード電圧が下がったので、パスコンに少しだけ上等のケミコンを使いました。日コンのミューズです。容量も1000μと十二分なものにしました。
  これでしばらく試聴しました。普段聴いている「富嶽」や「BIG-ONE」に比べると、高域はもやもやとしていますし低域は「お団子」です。以前はそれなりに鳴っていたと思うのですが、耳が肥えてしまってのでしょう。
信号回路


電源回路

 このアンプのカソード抵抗を取り外し、代わりに定電流回路を挿入しました。回路図の点線で囲んだ部分です。丁度82Ωの抵抗があったので5V/82Ωで60mAになります。変えたのはここだけです。
  しかし、音の変化は我が耳を疑うほど劇的なモノがありました。高域はモヤモヤがとれ、各楽器が柔らかく浮かび上がって来ます。低域はスッキリとし、ローエンドがぐっと下がります。良い意味でのメリハリが付いてきて、少出力でも聴き劣りがしない音です。差動アンプの音の特徴が総て出てきます。シングルアンプで差動アンプと同じ効果が出てくる。これはどうしたことでしょう。前と違っているのはプレート電流が厳密に一定値に保たれている事です。シングルA1級でも出力によってプレート電流が多少変化します。これがありません。違っているのはここだけですから、音の変化はこれによって起こった。すなわち、差動アンプの音はプレート電流を一定に保つことによってもたらされると考えざるを得ません。

 後記
1.
定電流回路のツェナーダイオードを働かせるため1Kの抵抗が繋いでありますが、ここは定電流回路からその分の電流を抜き出すことになっていまいます。2mAの定電流ダイオードに交換し、総てのカソード電流が定電流回路を通るようにしました。これによる音の変化は、私の耳では捉えられませんでした。

2.
カソードのバイバスコンデンサーにOSコンをパラってみました。案の定少し音が変わります。このコンデンサーによる色づけは避けられないようです。でもシングルアンプでは、元々電源の平滑コンデンサーが入ってくるのは避けられない事ですから、それと直列にもう一つ入ってると思えば済むことです。

3.定電流回路の説明

  D970のベースに6.2Vのツェナーダイオードをつないでこの電圧に固定します。D970は内部ダーリントン接続の石ですのでベースとエミッターの間の電圧低下は1.2Vになります。ここに82Ωの抵抗を入れると5V/82Ωで、60mAの電流が流れます。この電流はカソードから流れて来ます。結局、カソードの電流を60mAに固定したことになります。但し、これはツェナーダイオードが働いてるという条件が付きます。そのためにはこのダイオードに2mA以上の電流を流す必要があります。この電流を原回路では1kΩの抵抗でカソードから取っています。(11V-6.2V)/1000Ωで4.8mA流していました。これを2mAの定電流ダイオードに変更し、ツェナーダイオードの動作のために流れる電流も定電流回路として使えるようにしています。

4.論旨の整理

1.コンパチアンプの時にはプレート電圧が高いので自己バイアスにしていた。
2.300Bだけ鳴らすなら固定バイアスが良いので、SRPPの出力電位を下げたい。しかし12AX7のヒーターカソード電位を考慮するとSRPPの下の球のカソード電圧のマイナス値には限度がある。かといって上の球プレート電圧を下げすぎると増幅度が足りなくなる。それで自己と固定のMixにした。
3.自己バイアスの抵抗を定電流回路に置き換えてみた。すると差動ライクな音に激変した。
4.カソードパスコンは元々入っているので、音の変化の原因を求めると定電流回路に行き着くしかない。通常の差動アンプとこのケースを比較すると共通するのはカソード電流=プレート電流を一定値にしているところだけ。
5.差動アンプの音はプレート電流を一定に保つことによってもたらされる。



追加実験

 コンデンサーの入る場所を変えた追加実験を行いました。使用したのは、左から
SANYOのOSコン150μ/16V 図中のA
日コンのミューズ1000μ/50V 図中のB
日コンの一般品100μ/450V 図中のC


  最初は、BにAをパラっていて、Cが無い状態ですから、信号はイ−ロ−ハ−ニ−ホ−ヘのルートを回ります。アースと電源の平滑コンデンサーが回路に入ってきます。
  2番目Cを付けました。信号は最初のループに加えて、より内側のイ−ロ−ホ−ヘというループを通ります。
  3番目は、BとCを取ってしまいます。定電流回路は交流にとって大きな抵抗となりますから、内側のイ−ロ−ホ−ヘというループしか存在しません。アースと電源の平滑コンデンサーは信号回路から外れます。

  この3つの状態で、「気のせい」以上の音の変化は見られませんでした。「差動PP」の御利益として、音楽信号が電源の平滑コンデンサーとアースラインを通らないという事が挙げられます。3番目の状態はこれを再現したものですが、他のケースと殆ど差はありません。ということは差動PPの場合も、音を支えている最も大きな要因はプレート電流の定電流化であると考えられるのではないでしょうか。
  1番目や2番目のように、ミューズやOSコンを使う場合も、3番目のように一般品を使う場合も音に大きな差が無い(ミューズにOSコンをパラに付けるのと付けないのでは若干の差はありました)ので、3番目のような一般品で間に合う回路構成の方が安上がりになります。もっとも、カソードパスコンが無くなりますので、ハムが入ってくる可能性があります。今回は幸いにして無事でした。 

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