3段差動全段直結 KT88ppの製作


2000.8.3
  ヒーター電流が0.3Aで、低内部抵抗で低いプレート電圧でも使える6922で行くことにしました。ただ6DJ8、6922と同族の日本製6R-HH2(MY FAVOURITE TUBES 参照)が押し入れの肥やしになっていたので、初段はこれを使うことにしました。
  初段差動の為のマイナス定電流電源は悩みました。今回も初段と2段目および「嵩上げ電源」には元のバイアス用の80V巻き線を使います。全段のプレート電源電圧が高くなるので、3倍圧整流になります。これを4倍圧にして1倍分をマイナスに回すとか、AC100Vから直に整流する事も考えました。しかし、わずか−10V程度の電源にしては電圧が高すぎますし、トランスを通さないで整流というのは万一の事を考えると踏み切れません。3倍圧整流のままで、アースポイントを抵抗やツェナーで少しずらすでも出来ないことはありません。電池という選択肢もあります。結局、小型の専用トランスを使うことにしました。2.5センチ角の小型トランスを画像のようにパワートランスの脇に接着剤で固定しています。最も小さいタイプですが、それでも12V-80mAと有り余る電源です。これでも体積的には006電池より小さくて済みました。

  調整ボリュームは「嵩上げ電源」用と各チャンネルのバランス調整用の計3個にしました。本来ならチャンネル毎に独立して設定する出力段のバイアス値ですが、大まかに「嵩上げ電源」で調整して左右の違いは差動回路での自動調整に委ねる事にしました。
  バランス調整用のボリュームは「シリーズ3 全段差動50CA10/300BコンパチPP」のように初段のプレート側に入れる予定にしていました。しかし、双3極管の両ユニットの差が大きい6DJ8族では負荷抵抗をかなり大きく変更しなくてはならず、増幅率に差が出てくると思われるのでカソード側に100Ωのボリュームを入れてアンプ全体を調整することにしました。なんとなく日本製の6R-HH2の方が両ユニットの差が少ないように思っていましたが、やってみると5本の内100Ωのボリュームで調整出来たのは2本だけでした。6922だと殆どがOKです(これは初段のプレート電圧が同一に出来るかどうかの話です)。2段目の6922はそのチャンネルの6R-HH2とは逆の方向にボリュームを回してバランス出来る物を選びました。最終的に出力段も含めて100Ωのボリューム1個でバランスが取れるようになるまで、球の選別と差し替えを行いました。

  出力球のカソード電流の安定化は直結差動アンプには重要な問題です。なまじ2球のカソード電流の和が一定になるように制御しているために、片方が増えればその分反対側が減るという具合にアンバランスが生じやすくなります。もっとも直結なのでグリッド電流が流れだしても処理できてしまう為に、暴走という最悪の事態には至らないとは思いますが。
  まずは、出力段のカソードに抵抗を入れました。しかし、これだけでは収まりそうにありません。幾ら出力球のマッチングが取れていても、その前の6922のプレート電圧変動を出力段のカソード抵抗だけでは吸収出来ません。6922のカソードへも抵抗を入れました。順々に増やしていって、3.5KΩでようやく出力段のアンバランス電流の変動が1mA以下になりました。内部抵抗が約40倍になり、その分gmが1/40以下になった訳です。12AX7と比べても数分の1のgmですから安定して当然でしょう。この時出力段のカソード抵抗は100Ωでした。この100Ωを外せるかなとやって見ましたが、とたんにアンバランス電流が増えてしまいます。

  これだけの抵抗をカソードへ入れてしまうと、電流帰還がかかりすぎてゲインが不足気味だし、音もとても6DJ82族とは思えない至極あっさりした音になってしまいます。電解コンで交流バイパスしました。このコンデンサーで音が変わります。ここには「MUSE」を使いました。たった1つのカップリングコンデンサーを外す為に、各チャンネル4個の電解コンデンサーを入れるというのは、本末転倒の気がします。

  ちなみに音の方ですが、「富嶽」の小型版といった感があります。球よりも、アウトプットトランスよりも、回路よりも、作り手で音が決まってしまいました(苦笑)。そう言えば「奈良の鹿野」さんや、「ボコ」さんが、それぞれに違うアンプを作ってこられた時も、聴き手からすれば似たような音がするなと思った記憶があります。

[信号回路]

出力  17W/at 0.9Vpp
総利得 28.5dB
NF      8dB

無単位の数字は抵抗(Ω)、コンデンサーは分子が容量(μ)を、分母が耐圧(V)を表しています。
コンデンサーは総て電解コンデンサー

[電源回路]

前段(+B1)および嵩上げ(+B2)電源


+B電源、初段定電流ダイオード用マイナス電源は基本的に「全段差動直結 KT88pp」と同じなので省略
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