オスカー・ピーターソン・トリオ/ウイ・ゲット・リクエスト[CD/ポリドール-POCJ2415]
このCDで私はジャズが好きになりました。それまでもジャズのLPは買ってたんですが、マイルスのトランペットを聴いては「こんな歪みっぽい音のどこがいいんだ」と思ったり、モンクのピアノを聴いてそのギクシャクしたフレーズに気分が悪くなったりで、なかなかアタリに巡り会えませんでした。もう浮気はやめてクラシックだけにしようと。これが最後と買ったのがこのLPでした。針を落としてコルコヴァードのベースが出だしたとたん、それまでのジャズに対する「不信感」がどこかへぶっ飛んで行ってしまいました。どんなに疲れたときでもこれを聴くと気分爽快になれる、そんなノリの良い演奏です。録音も優秀です。B面(これも死語か)のトップのユー・ルック・グッド・トゥー・ミーでは、名ベイシスト、レイ・ブラウンのボーイングも聴けます。ピータソンのピアノが、クラッシックの人間にも違和感のない、綺麗なタッチだったのが幸いしたのでしょう。その後もビル・エヴァンスやキース・ジャレットといったタッチの綺麗なピアニストがお気に入りになりました。このアルバムは不思議とノイズが出にくく、ずっとLPで聴いていたのですが、最近特価品で見つけたのでCDも買いました。リマスタリングでより細かい音がきこえるようになっています。
  

音楽三昧/展覧会の絵[CD/ALM RECORD-ALCD7016]
  クラシックを原曲とは別の楽器を演奏する試みはよく行われます、日本では山本邦山の尺八、沢井忠夫の琴でのバッハやモーツァルトの編曲が思い出されます。このアルバムでは、なんとムソルグスキーの展覧会の絵の、それもフルオーケストラ版を古楽器で演奏するという離れ業をやっております。あのカラフルでダイナミックなラヴェルの編曲を、4人の若い日本人のグループが、リコダー、ヴィオローネ、ビオラ・ダ・ガンバといつたか細い音量の古楽器で演奏しています。オケ版ならフルオーケストラが咆吼するキエフの大門なぞどうするのだろうと聴いていますと、吹く、擦る、楽器の胴を叩く、あらゆる演奏手段?を駆使して盛り上げていきます。音楽の構造がよく見えるという小編成ならではのメリットもよく生かされた楽しい編曲です。録音も、Dレンジが上に延びないのなら下で勝負と、感度を上げて録っているせいか低域が意外と豊かに入っています。録音面でもなかなか楽しめるアルバムです。このグループには他にもショスコビッチの交響曲第5番、ラヴェルのボレロ等のアルバムもありますが、最近はあまり活動を聞きません。

ゴルゴ13[LP/フィリップス-22PG1]
  バキューンという銃声、スポーツカーがスピーカーの左から右へ爆音を立てて走り去る。やがて日下武史がクールな声で語り始める。そこはもう劇画ゴルゴ13の世界。こんな楽しいアルバムがアナログ真っ盛りの時代に作られておりました。効果音と語りだけで作られる無彩色の世界。原作者のさいとうたかお氏が、帯で「私は脳天を打ち抜かれた」と表現されています。私は生の銃声を聞いたことがありませんが、いろんな小銃の銃声を集めたLP(これも珍盤)で聞くとパンとしか聞こえません。それがこのLPではまさしく劇画の表現、バキューンと聞こえます。どんな手を使っているんでしょうね。プロの世界は奥深いです。
  デジタルの世の中になって久しく、いくらミックスしてもS/Nが落ちない材料がいくらでも転がっているというのに、この手のCDはありません。情報がどんどん映像としてインプットそれる今日、人はもう想像力を働かして楽しむという事ができなくなったのでしょうか。
  このLPには4話分が収録されていますが、帯をよく見ると「昭和54年4月次号発売予定」とありました。これは見逃していました。この次号も聞いてみたかった。

ジャック・ルーシェの四季[CD/ポリグラム-PHCD1570]
   ここ10年近くレコ芸の姉妹紙「ステレオ」の新年号を買っています。その年のCD優秀録音ベストテンと付録の「CDカタログ(クラシック編)」が目当てです。レコの新年号の付録同様のものです。こっちの方が安い。でも一昨年からはその年の全CDのカタログではなく優秀録音だけの薄い冊子になってしまいました。兄貴分のレコ芸の方からクレームが出たのでしようね。レコ芸と違って、こちらの「音には点数をつけるけど、音楽の中身はしらないよ」という割り切ったスタンスが気に入つています。
  これは1997年のポピュラー部門第8位です。TELARCレベールのジャズ録音です。この時ベスト・テンに入ってるアルバムで曲とプレイヤーどちらも馴染みがかるというのが決定理由でした。アタリでした。ジャック・ルーシェは、その昔プレイバッハというシリーズでバッハをジャズ風に仕立てて弾いておりました。原曲の曲想を保ちながら、純粋のジャズのようにきこえるという、ポピュラーからクラシックへのアプローチのなかでも出色の編曲でした。今回のは楽器構成が違っているように思いますが、同様なコンセプトで編曲されており、「ジャズ風四季」を楽しめます。音は「保証済み」なので中身さえこのようにフィットすればアタリになります。ジャック・ルーシェは翌年も同様な趣向でサティ編を出していますが、こっちの方は録音のクオリティは同じでもこれに比べればイマイチの感があります。
  「ジャスを聴くと眠くなる」という息子も、この四季は例外的に気に入っています。一方で、イマイチという人もありました。彼は最近のヴァン・ゲルダー・のリマスターシリーズがお気に入りです。私は今になってあんな昔風のドンシャリ音にこさえる事に意義があるのか、はなはだ疑問に思います。当時の蒲鉾型の特性しか出なかった装置をソースのほうでイコライジングしてたわけですから。それを「いい音」と評価できるということは、装置か耳かが蒲鉾型の特性になっているのでしょうか。世の中様々です。

オーヴェルニュの歌[CD/キング-KICC8591/2 LP/キング-SR5143/4]
   私はこれで声楽に目覚めましたというか、食わず嫌いが直りました。それまでクラシックの声楽というと、声が造り物のような感じがするし、キンキンして音がつきまとって、いまいち食指が延びない分野でありました。声楽の再生がオーディオで最も難しいという事も後になって知りました。
  ステレオの古い録音ですが、素朴で初々しい歌声です。ほんのり甘く、透き通っています。ダブラツについては余り情報がありません。ライナーノートには渡米してバーンスタインやストコフスキーと競演しい絶賛を浴びたとありますが、これ以外のアルバムも知りません。本当に地声の良い歌手が、声がよく出て表現も付けられる丁度良い年頃に録音してできたものなのでしょう。
  一時オーヴェルニュの歌が流行った事があり、テ・カナワやアンナ・モッフォ、ロスアンヘレスなぞも録音しています。彼女等の方が声が洗練されており、表現力を駆使した立派な演奏ですが、声そのものの魅力という点でダヴラツに軍配が上がります。
  演歌では、一曲だけがヒットしていつまでも記憶に残る歌手があります。ダブラツはクラシックの一発屋なのでしょう。それにしても、あの澄んだ歌声がこのアルバム以外では聴くことができないのは残念です。

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