パラシングル・ユニバーサルアンプ 「BIG−ONE MarkU」
2001.9.22 2001.10.10 revised
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BIG-ONE MarkU
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RW20は優秀な性能を持つOPTであることが分かりましたが、20Hzまで10Wを保証しているF2007に比べると容量が小さいこと、パラシングルとして使うと負荷抵抗として10Kになり各真空管の最適負荷から離れすぎるという面があり、これを用いたパラシングル・ユニバーサルアンプは断念しました。RW20ではいつか6L6やEL34を使ったコンパクトなシングルアンプを作る事にします。 代わりに「BIG−ONE」をパラシングル用に改造することにしました。「BIG−ONE」の詳細についてはシングル・ユニバーサル・アンプ「BIG−ONE」の製作記 プレイバックをご覧ください。「BIG−ONE」は3つのソケットを持っていますが、この内6C33や826用のセプターソケットを、亡き三栄無線の穴あき鉄板を用いて落とし込みのオクタルに改造しました。ここは「バーサタイル・ソケット」となり、オクタルの場合はそのまま元のオクタルとパラで動作させられますし、UXの場合はUX->オクタル・アダプターを利用して元のUXとバラ駆動します。周りの4本のサポートは、追い出されたセプターソケットに合わせてあり、オクタルへの変換アダプターの固定用です。 プレート電圧測定端子も各真空管とOPT出の電圧測定用に増設しました。黄色がOPT出、赤がフレート電圧で10Ωの抵抗を介してOPT出と繋がっています。パラシングル時には2つの赤端子の電圧差が0の時、2本の真空管のプレート電圧と電流が一致します。手持ちの球ではペアチューブなぞ無いので、最大出力を得るには2本の真空管のプレート電流を揃えて、倍になったプレート損失を最大限活用する必要があります。 7119のカソフォロ球の左にくっついているスイッチは、7119の2ユニットを別個に動作させるか従来の「BIG−ONE」のようなパラ駆動させるかの切り替えに使います。826や811のような送信管をA2動作させると20mA以上のグリッド電流が流れ1ユニットでは保たなくなります。カソフォロ球の右の灰色のつまみはバイアス調整、その上の青色の小さなつまみはバイアスのバランス調整です。これでグリッド電圧を変化させて7119のプレート電流を増減し、カソード抵抗(25K/6W)の電圧を調整して、直結している出力管のバイアスを調整します。調整範囲は現在+28V〜−97Vです。 初段の6267とループNFのON/OFFスイッチや、アンプ前面の5結/3結切り替えスイッチやハムバランサーはそのままです。フィラメント電源回路は変更せず、2本のフィラメントを並列にして直流点火し、ハムバランサーも2本まとめて面倒みています。
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(左)BIG-ONE MarkU 6C33 (右)UX->オクタル・アダプター
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BIG-ONE MarkU 回路図
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電源部は殆ど「BIG−ONE」のままです。6267の負荷抵抗とパラになる7119のグリッド抵抗は信号の振幅幅を考えると、出来るだけ大きくしいたものです。しかし、7119の固定バイアスでのグリッド抵抗値は最大500KΩと定められています。一方バイアスのバランス用の20Kボリュームを活かすにはアースとの間に抵抗を入れて電位差が出来るようにする必要があります。この抵抗は大まかに見ると22μ/350Vのコンデンサーで交流的にアースされていますから、6267から見ると抵抗値は0です。しかし7119の固定バイアスのグリッド抵抗にはカウントされます。7119のグリッド抵抗は、最大で390Kになりました。6267から見ると2本パラですから、実質195Kという事になって「BIG−ONE」の300Kより小さくなり、その分信号の最大振幅幅は若干小さくなります。 「SW1」は7119の2ユニットのパラ/個別の切り替えスイッチです。「SW3」は出力管のG2端子をプレートに繋いで3結とするか、+250Vの定電圧電源と繋いで5結とするかの切り替えスイッチです。3結の場合、下側の出力管はよけいな10+10Ωの抵抗を介してフィードバックされます。また、NFB抵抗も少し小さくしてフィードバック量を増やしました。「スワン」等の非密閉タイプでは低域が少し甘くなるのを修正しました。
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BIG-ONE MarkU 245パラシングル
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最もパラシングルとして動作させて見たかったのが245です。茄子型古典球には独特の典雅な響きがあり、245はその典型です。しかし、2Wという出力はいくら真空管アンプといえども辛いものがありました。「富嶽」ではPP動作で8.4Wの出力が得られましたが、プッシュプル臭さが出てしまって「典雅な響き」が損なわれてしまいます。パラシングルでリベンジと言うわけです。これは大当たりでした。「富嶽」ほどではありませんが、5.7Wと250シングル以上の出力があり、パラ駆動で低域の充実した「典雅な響き」が得られました。これで聴くスメタナ弦楽四重奏団の響きは万歳三唱の絶品です。 Ip(mA)は各真空管毎の値です。調整抵抗というのは、フィラメント電圧を調整する抵抗で6.3V/6.6Aの巻き線をブリッジ整流後、平滑コンとフィラメントの間に入れます。245の2.5Vに調整するには約5V落とす必要があり、12.5Wもの発熱があります。245はGmの近いモノ同士2本ペアにして使いましたが、片方のペアは1本あたり規定の1.25Aで2.5Vになるのに、もう一方のペアは電流が流れ易くは1.45Aとなり、それぞれに合った調整抵抗を作りました。
EL34は20Wを越す出力が得られ、しかも完全A級です。もう少し電圧を下げてプレート電流を増やしてやれればシングル時の12.5Wの丁度2倍の出力になりそうです。 この中でお買い得はHY65です。プレート損失が245と同じ10Wしか無い、トッププレートの直熱ビーム管です。EL34程度の大きさですが、タイトのがっちりしたベースで明るく輝くトリタンフィラメントを持っています。足はオクタルでプレート以外のピンアサインも6L6と同じで当機でもアダプター無しで使用出来ます。クラコンで1.5Kで買いました。直熱管特有の音離れの良さがあり、ベース、ブンブン、ドラム、カンカンのジャスのスイング感を見事に再生してくれる一方で、クラシックの弦も艶やかにチャーミングに鳴らすという万能タイプです。「富嶽」では14W得られましたが、パラシングルでの動作の方がHY65の良さを100%発揮しているように思います。
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