箱の周囲は厚さ14ミリ、巾90ミリの単板です。底板は同厚で巾180ミリで、手前は40ミリ開けてあります。底板は下から10ミリ浮かして取り付けており、外気がSL10の裏板のスリットから、この隙間を通って入ってくるようにしてあります。箱の深さは66ミリですが、ソフトンのOPTはケースから出すと体積が半分以下になるので充分余裕があります。左右のトランスの間に47μ/550V*3のブロックコンデンサー(ラックスキットのA3600から外したもの)を2個入れて、出力段の平滑回路もここへ収めてしまおうという魂胆です。
次は、いよいよ内部の公開です。
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シャーシSL10は蝶番で下の木箱に固定されており、前方から蓋のように開けて、回路調整が出来るようになっています。「富嶽」では外側に測定端子や調節スイッチ類を設けましたが、更に測定個所が増えてくるので通電状態で「蓋」を開けて調節するようにしました。
OPTは借り物なので余分な線を切りつめていません。バラック配線状態です。左下の白枠内はぺるけさんご推奨の出力球カソードから直接OPTの+Bに行くパスコン。当初ニコイチのブロックコンを考えていましたが、いよく考えるとここはプラマイナスの端子が別々に必要になります。47/500V*2のブロックコンを2個投入する羽目になりました。その左隣の黄緑色の枠内は出力段定電流回路、左端の空色の枠内は200Vのプラス・マイナス電源です。7119-2段の電圧増幅段、バイアス回路及びカソフォロ段はピンクの枠内に詰っています。
通常のアンプはこのピンクの枠内から更にカソフォロ段を外したものです。この手のアンプが如何に電源回路に手間とスペースを食うかお解りいただけると思います。。
「富嶽2」 離陸の時迫る 2003/8/7
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傍熱管なので回路図にあるようなフィラメント回路は使っていません。2段目は定電圧回路を省いて、+Bから10Kの抵抗で50V落として使う設計になっています。縦型の電解コンは最大450V耐圧なので、出力球に安定した電流が流れるまでは耐圧オーバーです。 今回はOPTが9.5Kとこれまでになくハイインピーダンスなので、1次と2次の巻線比が大きくなります。それだけ回路としての最大振幅を大きくとらなければいけないと、低内部インピーダンスの7119を高電圧で使いました。
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出力管をKT88にして各部を修正しました。2段トータルでの出力電圧を300Vp-pまで稼ぐために初段の負荷を軽くし、カソード抵抗を小さくしてプレート電流を増やしました。また増幅率を若干下げるため初段カソードパスコンは外しました。 結局出力段のカソードパスコンはOPTに繋ぎませんでした。理由は音です。ここのパスコンで音はコロコロ変わります(だからオートバイアスは嫌いだった)。ミューズと通常品の差が甚だしく50Vの耐圧に合わせて通常の使い方になりました。16ΩのKNF巻線が2系統あるので一方をこのバイパスコンを通してカソードに繋ぎKNFとして使いました。これだけで6dB有ります。更にもう一方をオーバーオールのNF用に使いました。球によってバイアス量を加減するためRNFは3段階に切り替えることが出来ます。UL接続分も加えるとトータルで約20dBのNFを駆けることができました。RW-40-9.5の素直な特性のお陰です。 出力はノンクリップで8.4Wでした。これは「Big−One」でのKTの出力の半分です。よけいなところが差動アンプに似ています。
出力段のカソード電圧は、固定バイアスを併用しているので定電圧回路が動く最低限の電圧にして発熱を減らすよう調整します。無信号時に調整すると10V程度で6.2Vのツェナーダイオードが定常の電圧に達しました。ところが出力をあげていくとここの電圧が下がって来ます。固定バイアスを浅くして、カソード電位を上げてやると定常電圧まで上がって来ます。最終的に最大出力時には約23Vにもなりました。固定バイアスを併用している場合は対応できますが、三端子レギュレータでオートバイアスのみの場合はどうなるのでしょう。バイアスが深い場合は問題は起きませんが浅い場合には定電流動作に至らない事も起こりうるのでは無いでしょうか。
最後に音ですが、素晴らしいの一言につきます。スケール感がありたっぷりとした低音、柔らかく暖かい中高音域、音像の奥行き感も申し分有りません。試作機の300Bより遙かに高品位で風格のある音です。ソフトンさんの新OPT、RW-40-9.5に負うところ大です。
カソード電圧対策 2003/8/10
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カソード電圧を嵩上げしないと定電流動作出来ない原因について、ぺるけさんの掲示板で、上條さん他の方々からKNF巻線からの信号の振幅がD970のコレクター〜エミッター間電圧以下でないと定電流動作できないとのアドバイスを頂きました。折角のKNFを減らすのも嫌なので、KNFをかけた後の信号が定電流回路に入るように変更しました。またカソード電流をバイパスして通常の固定バイアスも選択できるように切り替えスイッチを設けました。
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