ドボルザーク/交響曲第9番
陸上自衛隊中央音楽隊

[CD/ 日本クラウン CRCI35007 ]
「クラシックを吹く」吹奏楽というとギャルド・レピュブリケーヌやカナディアン・ブラスが思い浮かびます。ギャルドのトッカータとフーガなぞ今聴いても、ブラスならではの流麗で豪華な演奏です。近頃ではこのように交響曲までがレパトリーに入ってくるようになりました。実は、しばらく前にPCM放送でブラスバンドの特集があり、気に入ったものを買おうとしたのですが、国内盤で残っていたのはこれ一枚だけだったのです。「吹奏楽による交響曲・管弦楽曲シリーズ」の第一弾で「幻想」なぞもあったようですが他は廃盤になっているようです。中央音楽隊といのは自衛隊の音楽隊の最高の部隊で、日本最大の吹奏楽団です。さすがに交響ともなると管楽器だけでは表現しきれず、コントラバス・打楽器・ピアノが加わっています。こうなるととても行進しながらという言うわけにはいかず、ステージ用の編曲になっています。でもトーンはブラスバンドそのもので、変に使用楽器を管楽器だけに限定するよりも返って自然な音楽として伝わってきます。昔ブラバンで下手なボーンを吹いていた者として、ブラスバンドでここまでやれるのかと驚かされた一枚。吹奏楽の極みです。  

 
トナカイの子守歌〜悲しみのカンテレ(原題SNOW KANTELE)
[CD/ワーナーミュージックジャパン WPCS10440 ]
カンテレというのはフィンランドの民族楽器で、ジャケットの右にあるような形をしています。ツィターのように胴に弦を張った楽器ですが、弦を指で弾いて音を出します。私が惹かれるのはその哀調を帯びた音色です。ツィターもある意味では暗い面を持っていますが、それとは全く別物です。倍音は少な目で(聴感だけですが)、高いピンと張った透明な音色そのものが、一切の虚飾を取り払って胸に響いてくる気がします。曲想もシンプルですが独特で、フォルクローレの温もりというよりは、幻想的で、神秘的なものを感じます。最近ではコンサート用の大型のカンテレも作られているようで、このCDでは両方が用いられています。
 カンテレのCDは少なく、他にはキングインターナショナルから出ている輸入物で「エレジー〜カンテレの世界」(原題KANTELE DUO)KKCC4162、「妙なる調べ/魅惑のカンテレ」(原題SONATA for KANTELE)KKCC4172、「カンテレの世界 Vol2」(原題FINNISH KANTELE MUSIC Vol2)KKCC4130くらいしか、私も持っていません。いずれも北欧の神秘的な音色の楽器カンテレを堪能させてくれました。このCDは新しい国内盤企画で入手し易く、価格も\1500(税抜)手頃なのご紹介します。

● レオポルド・ストコフスキー
[DVD/DENON COBO4061 ]
  「シカゴ交響楽団と巨匠たち」というシリーズのDVDです。曲は一八番のバッハのトッカータとフーガ、ブラームスのハイドンの主題による変奏曲、リムスキー・コルサコフのスペイン奇想曲です。ストコフスキーという名を出しただけで眉をひそめる真面目な?クラシック・ファンも多いようですが、私はロシアものに代表される彼の華やかな演奏が大好きです(そう言えば朝比奈もかっては日本のストコフスキーと言われていたとか)。1912年にフィデルフィアの常任になり、1977年に95歳で死ぬ直前まで、半世紀以上の録音が残っている指揮者なんて他にはいません。それだけファンがいて、評価されていたという何よりの証拠でしょう。映画にも出演し、あの大女優グレタ・ガルボ(ヘップバーンや吉小百合が束になっても敵わない「大スタア」。もっともこの二人さえ知らないと言われかねないが)と浮き名を流したのでも有名です。これは男嫌いガルボに振られたようで、ガルボは一生独身でした。
  右の写真は1937年の「オーケストラの少女」という映画のサントラのSP盤のレーベルです。ストコフスキーというと、昔NHKが日曜日の昼前に放送していたこの映画を思い出します。顔は主演のディアナ・ダービンです。彼女がストコフスキーに掛け合って失業中の楽団員のオーケストラの指揮をして貰うという筋で、ラストのカーネギー・ホールでのコンサートでは椿姫の「乾杯の歌」や「ハレルヤ」を歌います。映画の中では私邸でストコフスキーがオルガン伴奏する場面も見られます。この映画は戦前大ヒットし、「乾杯の歌」は「軍歌か浪花節」のうちの親父でも知っている曲となりました。ダービンは大金持ちと結婚して引退しましたが、歌は本当に歌っていたようで、SPから編集したLPアルバムをアメリカ出張中に見つけました。原題は「100men and a girl」ですが、邦題の方がずっと合っています。今は原題をカタカナにするだけというイージーな事をやっていますが、この頃は少しでも多くの人を呼び込もうとタイトルにも知恵を絞っていたのですね。

● サンサーンス/交響曲第3番 アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団
[CD/ユニバーサル UCCD7065 ]
  先月末(2001/4)発売された「デッカ・ベスト100ザ・スペシャル」の中の一品。カップリングはフランクの交響曲です。デジタルリクスタリング技術は進歩を重ね、今や音質はどれだけオリジナルに近い音源を料理するかで決まってしまうようです。数年前マーキュリーのリビングプレゼンスシリーズが、50年代後半から60年代前半の古い録音にも拘わらず、フレッシュなアナログっぽい音で評判になった事が有ります。LP時代に売れていかなったのが「幸い」して、本当のマスターからリマスタリングできたからなのでしょう。このシリーズも右の写真のように「デッカのオリジナルマスター」を使っていると謳っています。マーキュリーのケースと違って何度も再販してきた音源ばかりで、はたしてどこまでオリジナルマスターに迫れたのか疑問があります。でも1枚1000円。ダメモトで買いましたが、これが大当たり。
  この曲は良く知られているように「オルガン協奏曲」と言って良いほど要所要所でオルガンの分厚い響きが鳴り渡ります。LP時代にはミュンシュやオーマンディよりこっち方がパイプオルガンの低域(第1楽章第2部の34.67Hzや、第2楽章第2部の32.7Hz)がよく入っていると言われていました。しかし、これまで私が入手した国内盤はLPもCDもリミッターがバッチリ掛かっていてオーディオ的には面白いものではありませんでした。それがこのCDでは、他にちょっと見あたらないほどオルガンの低域がくっきりはっきり出てきます。アンセルメのこれまでの、どちらかという淡泊な演奏のイメージがひっくり変える、壮絶なオーケストラとオルガンのバトルになっています。これが本当の姿だったのです。高域の細かい音もよく録れているのが判ります。「原音復活」に嘘はありませんでした。このシリーズは買いですね。

● ジュリー・ロンドン SuperNow
[CD/東芝 TOCP-51010 ]
  先月の「デッカ・ベスト100ザ・スペシャル」はアンセルメのものを中心に20枚も買ってしまいました。今月は、ちょっと脱線してジャズ・ボーカルを。
  写真右は実はLPのジャケットです。1960年代私が学生の頃、安物のジンを飲んで酔っぱらっては聴いていたのがこの一枚。当時のヒット曲「密の味」や「モア」を始め、彼女の十八番「クライ・ミー・ア・リバー」(涙が流れて川になるまで泣いてとは、なんと大げさな!)、「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」、「想い出のサンフランシスコ」、「サマータイム」等々が入ってて最後の曲が「グッドバイ」。リバティレーベルからの寄せ集めですが、いかした選曲です。殺風景な4畳半の和室でも、豪華なナイトクラブにいる気分させてくれました。ちなみに、なんでジンかというと、ウイスキーやブランデーは等級に分かれており、一番安物の2級では「モルトの混合率5%以下」でも良かったのです。つまりモルト0%で、アルコールとを水で薄めて色をつけた飲み物が「ウイスキー」や「ブランデー」として通用できたのです! 一方ジンには年代がないので「本物」でも安い値段で買えました。
  当時の東芝には「エヴァグリーン」と言って、赤色の透明な盤がありました。普通の盤は塩化ビニルにカーボンブラックを練り込んであって黒色だったのですが、これは別の安定剤を使っていてホコリが基本的につかないというものでした。オーディオ評論家には評判が良くなかったのですが、先日レコード棚で「再発見」して久しぶりにかけたところ、30年以上経っても確かにホコリによるノイズは全くありませんでした。僅かな音質の差より、このように長年品質を維持してくれる技術のほうが一般人には有り難いですね。ビートルズやフルトヴェングラー/ウィーンフィルの一連のシリーズがこの盤でしたが、オイルショックによる石油製品の高騰で消えてしまいました。
  今更、こんな昔のLPをお薦めしても入手不可能ですが、写真左のCDが出ています。全22曲でLPの14曲より殖えています。「クライ・ミー・ア・リバー」や「想い出のサンフランシスコ」は共通ですが、ポピュラー曲の「密の味」や「モア」が無く、「ラウンドミッドナイト」「ミイティ」「ブラックコーヒー」等のジャス系の曲が多く入っています。ベギー・リーの「ブラックコーヒー」との聴き比べも一興かと。音源はCDはキャピトルでLPのリバティとは異なっています。CDの方が録音年代が古いせいかも知れないのですが、音はLPの方が「迫力」があります。CDの方は当然バックグラウンドノイズは少ないのですが、ノイズと一緒に細かい音も整理されてしまったかのようで、あっさりしていて、「妖艶なハスキーボイス」の濃さが少し薄れています。外盤でリバティ音源のCDも探して見たいと想いますが、彼女は昨年74才で亡くなっており、その時にどっとCDが出たという事も有りませんでしたので難しそうです。


PS.LIBERTY音源のCDは、1995年に国内盤で出ておりました。  2001.6.16
  ジュリー・ロンドン オンTV東芝 TOCP-8626
 LP盤と同じ「声」で、キヤピタルのよりずっとセクシーです。ジュリー・ロンドンのベストCDならこちらの方がお薦めです。オンTVというのは「ラヴレターズ」がジャガーの、「魅惑のワルツ」(映画「昼下がりの情事」主題歌)がトヨタのクレスタのCMに使われたというのが由来のようです。

● 8月の「逸品」料理  「ケッセル・プレイズ・カルメン」「カルメン特集」へ移しました。
  

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