●トナカイの子守歌〜悲しみのカンテレ(原題SNOW KANTELE)
[CD/ワーナーミュージックジャパン WPCS10440 ]
カンテレというのはフィンランドの民族楽器で、ジャケットの右にあるような形をしています。ツィターのように胴に弦を張った楽器ですが、弦を指で弾いて音を出します。私が惹かれるのはその哀調を帯びた音色です。ツィターもある意味では暗い面を持っていますが、それとは全く別物です。倍音は少な目で(聴感だけですが)、高いピンと張った透明な音色そのものが、一切の虚飾を取り払って胸に響いてくる気がします。曲想もシンプルですが独特で、フォルクローレの温もりというよりは、幻想的で、神秘的なものを感じます。最近ではコンサート用の大型のカンテレも作られているようで、このCDでは両方が用いられています。 カンテレのCDは少なく、他にはキングインターナショナルから出ている輸入物で「エレジー〜カンテレの世界」(原題KANTELE DUO)KKCC4162、「妙なる調べ/魅惑のカンテレ」(原題SONATA for KANTELE)KKCC4172、「カンテレの世界 Vol2」(原題FINNISH KANTELE MUSIC Vol2)KKCC4130くらいしか、私も持っていません。いずれも北欧の神秘的な音色の楽器カンテレを堪能させてくれました。このCDは新しい国内盤企画で入手し易く、価格も\1500(税抜)手頃なのご紹介します。
● レオポルド・ストコフスキー
[DVD/DENON COBO4061 ]
「シカゴ交響楽団と巨匠たち」というシリーズのDVDです。曲は一八番のバッハのトッカータとフーガ、ブラームスのハイドンの主題による変奏曲、リムスキー・コルサコフのスペイン奇想曲です。ストコフスキーという名を出しただけで眉をひそめる真面目な?クラシック・ファンも多いようですが、私はロシアものに代表される彼の華やかな演奏が大好きです(そう言えば朝比奈もかっては日本のストコフスキーと言われていたとか)。1912年にフィデルフィアの常任になり、1977年に95歳で死ぬ直前まで、半世紀以上の録音が残っている指揮者なんて他にはいません。それだけファンがいて、評価されていたという何よりの証拠でしょう。映画にも出演し、あの大女優グレタ・ガルボ(ヘップバーンや吉小百合が束になっても敵わない「大スタア」。もっともこの二人さえ知らないと言われかねないが)と浮き名を流したのでも有名です。これは男嫌いガルボに振られたようで、ガルボは一生独身でした。 右の写真は1937年の「オーケストラの少女」という映画のサントラのSP盤のレーベルです。ストコフスキーというと、昔NHKが日曜日の昼前に放送していたこの映画を思い出します。顔は主演のディアナ・ダービンです。彼女がストコフスキーに掛け合って失業中の楽団員のオーケストラの指揮をして貰うという筋で、ラストのカーネギー・ホールでのコンサートでは椿姫の「乾杯の歌」や「ハレルヤ」を歌います。映画の中では私邸でストコフスキーがオルガン伴奏する場面も見られます。この映画は戦前大ヒットし、「乾杯の歌」は「軍歌か浪花節」のうちの親父でも知っている曲となりました。ダービンは大金持ちと結婚して引退しましたが、歌は本当に歌っていたようで、SPから編集したLPアルバムをアメリカ出張中に見つけました。原題は「100men and a girl」ですが、邦題の方がずっと合っています。今は原題をカタカナにするだけというイージーな事をやっていますが、この頃は少しでも多くの人を呼び込もうとタイトルにも知恵を絞っていたのですね。